名護市辺野古の新基地建設工事を巡る抗告訴訟で、辺野古周辺に住む市民4人の原告適格を認めた福岡高裁那覇支部の二審判決を不服として国が上告した。弁護団の白充弁護士は、「国は実質的な審理から逃げて『入り口論』に引き戻そうとしている」と憤る。国の上告を受けて訴訟はどう展開していくのか。白弁護士に見通しを聞いた。
白氏によると、二審判決を不服とする上告の手続きは、「上告」と「上告受理申立」の二つ。「上告」は、判決に憲法違反がある場合などに限られるため、国は「法律解釈や最高裁、高裁判例の違反」が疑われる場合に行う「上告受理申立」を選択したとみられる。
最高裁が国の訴えを不受理とする決定をした場合は「原告適格」が認められた二審判決が確定し、国交相裁決について那覇地裁での「実質的な審理」に移る。
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白氏は「県の埋め立て承認撤回処分を取り消した国土交通大臣の裁決が、公有水面埋立法に照らして適法だったかどうかの審理だ。これまでの住民側の訴訟では撤回の入り口論に終始し、司法判断が示されることがなかった」と解説する。
ただ、今回の国の上告について、最高裁が受理するかどうかの判断を下すことになり、裁判はさらなる長期化が見込まれる。訴訟は2019年4月に提起されており、すでに5年が経過した。
最高裁の判断時期について白氏は「最高裁の決定に決められた期限はない。原告の権利救済はさらに遅れることになる」と問題視する。
最高裁が国の訴えを受理すれば、最高裁小法廷で二審判決が審理されるが、その場合にはこれまでの傾向から、原告側に不利な結果が予想されるという。その上で、白氏は、国の上告に対して最高裁に原告側からの意見を提出する方針を示し「こちらの訴えが認められると考えている」と力を込めた。
(安里洋輔)