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【識者】人命よりも皇国存続 陸自15旅団HPに牛島司令官の辞世の句 石原昌家氏(沖国大名誉教授)


【識者】人命よりも皇国存続 陸自15旅団HPに牛島司令官の辞世の句 石原昌家氏(沖国大名誉教授) 石原昌家氏
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 沖縄戦を指揮した第32軍の牛島満司令官の首里から南部撤退の決定は、皇国の存続のため、住民を米軍の掃討戦の最前線に立たせた「捨て石持久作戦」だった。南部撤退後、日本軍により、壕追い出し、幼児の毒殺、絞殺、殺害、民間人を動員した弾薬運搬、水汲み、食糧強奪、スパイ視虐殺などが起きた。県は第32軍司令部壕の保存・公開を進めているが、被害の実態を踏まえた住民の視点に立つべきである。

 自衛隊幹部学校は、大本営船舶参謀だった馬淵新治氏が戦後まとめた「沖縄作戦における沖縄島民の行動に関する史実資料」で沖縄戦について学習してきた。そこでは沖縄戦の教訓として住民から軍事機密が漏れるため、戦闘開始前に住民を島外へ疎開させることが強調されている。今、日本政府は戦場となることが予想される地域から、住民を排除する計画を進めているが、沖縄戦から得た教訓を実行する段階にきていると思える。

 牛島司令官の作戦は、「沖縄民族皆殺し作戦」であり、それを肌で感じ取っていた住民もいた。その辞世の句は人命は眼中になく、皇国の存続しか念頭にない非道な句だ。自衛隊がその句を掲げることは、この先、住民にはいかなる運命が待ち受けているかを想像させる。沖縄戦の凄惨(せいさん)な戦場の記憶がよみがえってくる。沖縄を二度と戦場にしてはならないという県民の思いを受けとめ、日本政府には県民の懸念を取り除き、沖縄を戦場にしない覚悟が問われている。

(談、平和社会学)