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県民感情を無視するのか 「削除せず」に批判拡大 牛島司令官の辞世の句 軍国主義回帰の懸念も


県民感情を無視するのか 「削除せず」に批判拡大 牛島司令官の辞世の句 軍国主義回帰の懸念も 陸上自衛隊の第15旅団司令部(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 陸上自衛隊第15旅団(那覇市)が公式ホームページで、日本軍第32軍牛島満司令官の辞世の句を掲載している問題で、木原稔防衛相は4日、削除に応じない考えを示した。15旅団も「問題ない」とするが、住民を犠牲にした沖縄戦の指揮官に対する県民感情を無視した対応に批判が広がっている。沖縄国際大学の石原昌家名誉教授は「削除して県民の懸念を取り除くべきだ」と求めた。 

 元県知事公室長として平和の礎建立に携わった高山朝光さん(89)は第32軍が日本本土や国体を守るために展開した持久戦により多くの住民に被害が出た沖縄戦の歴史的経緯を踏まえ、「防衛省は県民感情を理解し、辞世の句は削除すべきだ。司令官として沖縄の住民を死に追いやった人物を称賛するような動きは県民感情として許されることではない」と指摘した。

 高山さんは第32軍司令部壕の保存・公開を求める会の理事でもある。牛島司令官が率いた第32軍について、「日本を守るための友軍が県民をスパイとして殺したり、壕から追い出したりした事実がある。自衛隊はかつての日本軍とは違う。軍国主義の時代に返ることがあってはならない」と警鐘を鳴らした。

 木原防衛相は4日、「沖縄の本土復帰直後の歴史的事実を示す資料」と説明し、掲載を正当化しようとしたが、牛島司令官の辞世の句は大きな文字の画像で目立つようになっている。

 自衛隊史に詳しい佐道(さどう)明広中京大教授は「沿革で第32軍とつながっているとは一言も書いていないのに、(辞世の句を)かなり大きく強調して見せている」と疑問視。沖縄の自衛隊が「日本軍とは違う」と地道な活動をして受け入れられてきた経緯を振り返り、「これまで住民感情を重視して受け入れられてきたのに、もう住民感情はいいのかとなる。大臣は『日本軍との連続性を疑わせるものはあってはならない』と削除を指導すべきだ」と語った。県民感情に向き合わない防衛省の姿勢に、「住民目線が薄くなり、軍事の論理だけで走っているのが不安だ」と懸念も示した。

(吉田健一、中村万里子、南彰)