県が6日に公表した2023年度の「沖縄子ども調査(0~17歳)報告書」。コロナ禍の影響を受けた21年度の調査に比べて世帯の収入は増加した。しかし、保護者を対象にした今回の調査結果は、収入にかかわらず生活の苦しさが増したことを鮮明に映す。物価高騰が低所得層の生活を痛撃する一方、所得制限で支援から漏れた世帯からも窮状を訴える悲鳴が上がる。子どもの暮らしは守られるのか。調査結果の概要を紹介する。(前森智香子、嶋岡すみれ、宮沢之祐)
受診抑制、低所得層ほど多く
県内では2022年4月から、全市町村で中学生までの子ども医療費が窓口負担ゼロで受診できるようになった。だが、依然として医療機関の受診を抑制するケースが見られた。
23年度調査では、過去1年間に子どもを医療機関に受診させられなかった経験は、低所得層ほど割合が高くなっている。受診抑制が「あった」との回答を経済状況別で見ると、一般層は16・8%だが、低所得層Iでは25・7%だった。
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受診抑制の経験があった回答者に、受診できなかった理由を尋ねたところ、全体では「仕事で連れて行く時間がなかった」との回答が66・6%で最も多く、21年度の40・9%から顕著に増加していた。報告書は「21年度調査ではコロナ禍で在宅勤務の保護者が一定数いたのに対し、23年度調査では通勤を再開して忙しくなり、子どもを通院させられない保護者が増加したのが大きな要因と考えられる」と分析した。
受診抑制の理由を経年で比較すると「家計が苦しかった」は、21年度調査より全体で約10ポイント減少しており、全ての所得階層で減少していた。中学生までの医療費の窓口無料が22年に導入された効果がうかがえる。
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面前でのDV、子どもへの影響懸念
不登校、いじめ、ひきこもり、高校中退、そしてヤングケアラー。そうした子どもが抱える困難は、いずれも所得が低い層ほど経験の割合が高くなっている。
報告書は、低所得が不登校やいじめの理由であると単純化することを否定する一方、不登校やいじめを経験している家庭では、保護者も困難を抱えていると指摘する。
特に「配偶者またはパートナー(元配偶者を含む)からの暴力」がある場合、不登校やいじめを経験する割合が2・7倍に。同じく「自殺を考えたことがある」場合も2・3倍となった。
報告書は、子どもの前でのDV(家庭内暴力)や保護者の精神的な不調が、子どもに心理的な影響を及ぼすことを懸念する。また、ヤングケアラーについては、子ども本人に尋ねる必要を指摘しつつ、低所得層Iでの経験が一般層の約4・4倍にもなったことに「看過できない高い数値」と分析した。
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<年収区分の目安>
報告書では、経済状況による影響を分析するため世帯の困窮程度を、低所得層I、同II、一般層の三つに分類している。4人世帯の場合の年収で見ると、低所得層I=260万円未満▽低所得層II=260万円~390万円未満▽一般層=390万円以上。