第2次世界大戦中の1944年、沖縄から台湾・高雄に疎開し、高雄第一中学校で学徒兵として動員され、戦争を体験した宮城政三郎さん(95)に21日、名誉卒業証書が贈られた。同校の後身で日本の高校にあたる高雄市立高級中学の荘福泰(そう・ふくたい)校長(59)が沖縄を訪れ、宮城さんと初めて対面。涙ぐみながら握手をし「宮城さんが世界平和を推進している努力に深く敬意を表したい」と語った。
宮城さんは県立第一中学校4年だった44年、高雄第一中学校に編入。45年3月、日本軍特設警備隊に、学徒兵として台湾出身の学友らと動員された。学友らは沖縄出身の宮城さんに親しくしてくれたという。米軍の空爆を受け、多くの学友が命を落とした。敗戦後、45年11月に台湾から故郷の与那国島に引き揚げた。卒業証書はなかった。
荘校長は、宮城さんの戦争体験を伝える本紙記事を読んだ、高雄に住む95歳の高雄第一中同窓生からの連絡で、宮城さんの存在を知ったという。80年前の学籍簿が引き継がれており、宮城さんは「所在不明」となっていた。無事を知り、校内の審査会で適格性が認められ、授与に至った。県内では初めてだという。
宮城さんは授与が決まった後、病で倒れたものの、この日を心待ちにしてきた。事前に収録したビデオメッセージで「平和な世に生きたかった、亡き学友らの無念を私たちは忘れてはならない」と訴えた。スムーズに言葉が出ないものの「ありがとう」と何度も繰り返し、報道陣に対して「世界平和」のメッセージを掲げた。
荘校長は米中対立で台湾や沖縄で緊張が高まる状況について「歴史の教訓を学ばないといけない。武力ではなく、一緒に座り、話し合うことが大事だ」と語った。
荘校長は、宮城さんが通っていた県立第一中学校の後身にあたる県立首里高校も訪れた。染織の様子を見学し、生徒たちとも交流。来年は生徒たちも連れ、再訪したいという考えを示した。
(中村万里子、呉俐君)