【国頭】「島バナナの魅力はね、酸味だよ」―。TBSのニュース番組「Nスタ」のお天気キャスターとして活躍している気象予報士の森田正光さん(74)は、目を輝かせる。森田さんは島バナナを普及して次世代に残すため、国頭村謝敷区に農園を開き、栽培に取り組んでいる。
島バナナとの出合いは20代の頃だ。石垣島で1本の島バナナを食べた瞬間、さわやかな酸味と「ほろ甘さ」が広がり、食感も舌触りがなめらかだった。普段食べているバナナとは違うことに感動した。それから、沖縄を訪れるたびに島バナナを探すようになった。
島バナナの普及に取り組み始めたのは、バナナが苦手という、ある人の一言だった。その人に島バナナを勧めたところ「これはバナナじゃない。本当においしい」と驚き語ったという。そこで「島バナナには人を感動させる力がある」と感じ、自身が働くテレビ局内で島バナナを勧めて回り始めた。こうして、島バナナが好きなメンバーが集まり、2019年に「島バナナ研究会」の発足に至った。
22年に「島バナナ協会」を創設。24年4月3日、協会を法人化すると同時に、国頭村謝敷に「森田さんの島バナナ農園」を開園した。現在、2~3カ月に一度、沖縄を訪れて島バナナ農家との情報交換や農園の視察などをしている。
森田さんによると、店舗などで販売されている島バナナは「酸味をしっかりと感じることができるものは少ない」という。農園に植え付ける苗は食味の良いものを選抜した。現在、島バナナの安定生産とブランド化を目指している。森田さんは「島バナナが失われることが一番嫌だ。多くの人に魅力を伝えていきたい」と力を込めた。
森田さんは6月24日、農園を訪れて新たな苗を植え付けた。苗は、謝敷で島バナナを栽培する友寄力さん(73)から提供してもらった。友寄さんの畑も視察し、栽培方法などについて熱心に質問した。友寄さんは「島バナナを広めようとする森田さんの姿は、とても励みになる」と話した。
70歳を超えてからの新たな挑戦。森田さんは「専門以外のことを知るのは本当に楽しい。もっと島バナナを探求していきたい」と笑顔を見せた。 (玉寄光太)