名護市の安和桟橋前の死傷事故を巡り、何が起きているのか。辺野古新基地建設に抗議する市民を制止しようとして警備員が亡くなった綜合警備保障(アルソック)で、経営陣に原因究明などを求める要望書を出したアルソック労働組合の小又寛委員長に聞いた。
―要望書を出した理由は。
「市民の安全を確保しようとダンプカーの前に出て亡くなった警備員の方は、まじめな方だったと思う。ふびんだ。警備業は他人の生命・身体・財産に関わる仕事で、まじめな人ほど一歩前に出る。今回の事故は全警備員の根幹に関わる問題で、なぜ起きたのか、検証することが筋だ」
「それにもかかわらず、会社側は検証について回答せず『受傷事故を防止するよう教育しており、身をていしての警備の提供は求めていないことは申し添えます』と言い訳程度に書いただけ。人が亡くなっているのにひどい状況だ」
―なぜ後ろ向きなのか。
「政治的なものが絡むからだろう。アルソックは基地建設などの国の公共事業に深く関わっている。大げさにしたくない心理が見え隠れする」
「アルソックは内部統制が厳しい組織だ。普段は、グループ内で事件事故が起きれば死傷事故でなくても速報、情報を詳細に末端まで共有し、現場に注意喚起をしている。しかし、これだけの死傷事故が起きたのに紙1枚送られてこない。それだけこの件には触れられたくないのだと思う」
「私も周囲の従業員も安和の事故を知らなかった。沖縄と本土で温度差がある。また、会社の回答通りにもし警備員が身をていさなかったら、会社および国側はそれで良しとしたのだろうか」
―市民側が事故原因と指摘するダンプカーの「2台出し」について、元警備員は「沖縄防衛局から搬入量を増やすよう要請があったと聞いた」と証言する。「ゲーム感覚のようにやっている警備員がいた」と語っている。
「『ゲーム感覚』というのは個人の資質なので分からないが、防衛局から『もっとスムーズにダンプカーを出してくれ』と非公式に言われたら『そんなことはできない』と断れない。そして問題になっても発注者は『言っていない』という。発注者に頼まれたら、僕らは何も言えない。それが全てだ」 (聞き手・南彰)