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安心して暮らせない現状 必要な支援は パネル討論<第1回沖縄県ハンセン病問題シンポジウム>


安心して暮らせない現状 必要な支援は パネル討論<第1回沖縄県ハンセン病問題シンポジウム> 登壇するパネリストの(左から)県保健医療介護部長の糸数公氏、ハンセン病回復者の神谷正和氏、回復者家族のO・M氏(O・M氏は希望によりプライバシーに配慮して撮影しています)=18日、那覇市泉崎の琉球新報ホール(ジャン松元撮影)
この記事を書いた人 琉球新報社

 ハンセン病回復者とその家族が地域で当たり前に暮らせる社会作りに向けた「第1回県ハンセン病問題シンポジウム」(県主催、共催・琉球新報社)が10月18日、那覇市泉崎の琉球新報ホールで開かれた。ハンセン病への根拠のない偏見や差別を生んだ強制隔離政策などを定めた「らい予防法」の廃止(1996年)から28年が経過しても、今なお偏見・差別が残る現状を受けて、初めて県が主催した。回復者やその家族が登壇し、いわれのない差別によって地域社会で安心して暮らせない現状を報告した。また、回復者の高齢化に伴う支援の在り方も議論した。シンポジウムの内容を詳報する。

 神谷正和 スリッパが怖い。後遺症で左足の感覚がない。階段でスリッパが脱げても気づかず、病歴が知られないか心配になる。ウラ傷と言われる後遺症もある。診てもらうには病歴を医者に言わねばならない。勇気を出して明かしても医者はウラ傷を知らず、結局、療養所で診てもらうしかなかった。回復者の高齢化が進み、地域で安心して暮らせるように、行政は責任を果たしてほしい。

 O 学校でいじめられ、先生にも差別された。一方で、先生がハンセン病について生徒たちの前で話し、いじめがなくなることもあった。いじめた子どもはハンセン病のことを知らない。大人が「怖い」と言うのをうのみにした。子どもに正しい知識を伝えたら差別はなくなるのでは。学校の人権教育に取り入れてほしい。子どもを通して、父母や祖父母も変わるのではないか。

 糸数 療養所を退所した人への取り組みが抜けていた経緯があり、県は2022年にハンセン病問題解決推進協議会を設けた。当事者やいろいろな人の意見を取り入れながら対策を取ることにした。ハンセン病への県民の理解を深める啓発と、回復者が何に困っているか把握し、支援することが二本柱となっている。

 佐野 フロアから、県ゆうな協会事務局長の仲程武さん、弁護士の神谷誠人さんに発言をいただきたい。

 仲程 ゆうな協会は現在、回復者の後遺症の診療や福祉、相談などに取り組んでいる。高齢化が進む中、病院、役所への同行支援や家事支援をしている。県内に500人の回復者がいるが、生活支援事業の利用件数が少ないのが課題。秘密厳守で支援しており、制度の周知を図りたい。

 神谷誠人 回復者や家族が安心して補償や支援の相談をできる仕組みが必要だ。安心して踏み出せる状況をつくるのは私たちの責任。恥でないことを恥と思わせる社会が間違えている。「私たちは決して差別をしない」と決意を表明する、こうした集会が繰り返し開かれることを願う。

 神谷正和 高齢化が進み、1人暮らしの回復者の生活が非常に厳しい。療養所への再入所ということになっている。

 糸数 医療機関に同行するコーディネーターをゆうな協会に配置した。往診のニーズも高いと分かったので、在宅支援を進めていきたい。相談の窓口を明確にしたい。啓発も継続しないといけない。よく分からずに偏見を持ち、差別してしまう社会が回復者や家族を苦しめる構図は、放っておけばなくならない。

 佐野 ハンセン病問題は私も含め一人一人が当事者。なぜこんな状況になったのか、学ぶ、知ることから始めてほしい。それは一人一人の責任でもある。社会全体で考え、解決に近づけたい。(敬称略)


【パネリスト】
■ハンセン病回復者 神谷正和氏
■ハンセン病回復者家族 O・M氏
■沖縄県保健医療介護部長 糸数公氏
■ファシリテーター 琉球新報社 佐野真慈記者