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【深掘り】コロナ対策に集中投入した反動? 沖縄県、相次ぐ不適切な会計事案 その背景と今後は


【深掘り】コロナ対策に集中投入した反動? 沖縄県、相次ぐ不適切な会計事案 その背景と今後は 沖縄県庁(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 県議会9月定例会の開会前後に県の不適切な会計事務処理事案などが相次いで発覚する異例の事態となった。背景には、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて職員を集中投入したことによる反動のほか、県の裁量が大きい一括交付金の事務処理に慣れすぎたため、補助金事業の事務処理が継承されていなかったとの指摘が上がる。

コロナ禍の動員

 沖縄は2020年度から3年間、行動制限が相次ぐ厳しいコロナ禍が続いた。20年8月からは県庁4階講堂に対策本部が設置され、各部局から職員が派遣された。ピーク時の22年3月には全県職員4185人のうちの15%に当たる628人が兼務も含めて動員された。県関係者によると、主に技術系職員で占められている土木建築部などでは、各課に数人程度の行政系職員が対策本部に引き抜かれ、経験が少ない職員が会計事務を担当する例もあった。

 21年度はコロナ対策のため戦後最多となる22回の補正予算が編成された。県関係者は「最近判明した不適切な会計事務処理と因果関係があるかは分からないが、確かにコロナ禍のあの時期は異常な状況だったのは間違いない」と語った。

人材育成の課題

 一般的な会計事務は担当職員が起案して、上司の班長や課長、各部局の総務課が改めてチェックする体制を敷く。これら二重三重のチェック体制に穴が開いており、ミスに気付かなかった。

 土建部所管2事業の手続きミスで約2億3千万円の国庫補助金を受けられない可能性のある事案では、12年度に創設された一括交付金という県独自の制度に慣れすぎたことがミスにつながった。事務処理方法が異なる全国メニューの補助金の事務を、一括交付金事業と同様に行ったことが原因だ。ミス防止のために作成したチェックリストにも補助金の手続きの項目が漏れていた。

 県議会初の問責決議提案を主導した沖縄・自民の島袋大幹事長は「職員一個人の認識不足とかチェックリストがないとか、そういう局所的な問題ではない。行政の基本中の基本である法律や制度の理解を深めるためのキャリア育成がなされていない」と指摘し、玉城デニー知事の県政運営を批判した。

迫られる再発防止

 野党・中立会派が提出した問責決議は一致して否決した県政与党だが、今議会で相次いで発覚した問題について「重大な事態だ」として、本会議終了後に各派代表者が池田竹州副知事と面会し原因究明と再発防止、県政運営にさらに緊張感をもって取り組むよう求めた。

 玉城知事は不適切事案が相次いだことから、9月定例会冒頭の27日未明、最終日の10月23日の両日に本会議場で陳謝する異例の事態に。玉城知事は「全庁全職員を挙げて、公務の遂行に対する信頼回復に努めていく」と述べた。県は再発防止策として24年度から会計実務の専門職「会計エキスパート」の養成や各部局に内部統制専任職員を置くことを検討する。 (梅田正覚、知念征尚)