大浦湾の埋め立て工事の着手は辺野古新基地建設に反対の意思を表明してきた沖縄の民意を受け入れない形で強行された。ただこの代執行に基づく埋め立て工事の着手自体が必ずしも節目と言うかと言えば、私はそうは思わない。
なぜなら国や米軍が安全保障を重視して強行的に基地の維持や建設を進めていくという大きな構図は、1950年代の米軍施政下での基地拡張時以来、根本的には変わっていないからだ。ここ20年は沖縄の意思を聞かずに強硬に基地を押しつける姿勢がより露骨な形で表れてきているということだ。
だから今回で沖縄からの抗議が終わるわけでもない。だが辺野古だけの問題にしてしまっては、抗議の在り方はより厳しくなるだろう。
そこで、ここ10年の東アジア情勢や軍事基地の機能強化といった大きな変化に目を向けた方がいい。「オール沖縄」は「辺野古新基地建設反対」のワンイシュー(論点)で盛り上がった面があるが、昨今は自衛隊も含めた沖縄全体の軍事化が進む。奄美から与那国まで含めた沖縄島だけに限らない軍事化の動きに、県民として、県政としてどう対応するかが問われる。
県が本年度から力をいれる地域外交の取り組みでは、今のアジア情勢の中で軍事化にかじを切れば、沖縄にとって問題が大きいことをしっかりと見せる必要がある。
沖縄戦後史の伝統で考えれば、抗議を続けることに加え、世代を超えてそれぞれの地域で起きていることを共有できるかがますます問われる。
(沖縄戦後史)