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費用膨張 移設長期化も 那覇軍港返還合意50年 環境懸念、反対根強く


費用膨張 移設長期化も 那覇軍港返還合意50年 環境懸念、反対根強く 那覇軍港(2014年撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 1974年1月30日に開かれた日米安全保障協議で、米軍那覇港湾施設(那覇軍港)を含む38カ所の在沖米軍基地で返還が合意され、30日で50年が経過した。軍港移設を巡っては2022年10月、県と浦添、那覇両市が形状の受け入れで合意。23年4月には日米間で合意し、計画は動き始めた。ただ、港湾施設の一部となる防波堤を巡っては難しい工事となることも見込まれ、費用の膨張や工事の長期化を危惧する声が浮上。軍港自体の遊休化が指摘される一方、環境への影響も懸念される工事に市民の間には反対意見も根強い。

 港湾施設の一部を構成する防波堤は、現在1650メートルある浦添第1防波堤を4040メートル延伸するほか、軍港北側で新たに500メートルの浦添第2防波堤の整備を計画する。県は昨年の県議会6月定例会の答弁で、既存の浦添第1防波堤の整備単価を基にした試算で、防波堤整備だけで2900億円がかかると説明した。

 だが、政府与党関係者は「その程度で済むとは思えない」と語る。

 その一因が海底地形だ。既存部分に比べて複雑で、最深部分は「30~35メートル」(那覇港管理組合担当者)に達するとみられている。既存部分は浅い部分にあるため、延伸部分のコストは相対的に高くつく可能性がある。

 那覇港管理組合の担当者は、今後行われるボーリング調査の結果や、物価の推移などによっても工事費用は変わるとし「現段階で明確な費用を示すことはできない」と説明する。

 巨額が見込まれる防波堤整備費用を国と地元のどちらが負担するかも未定。関係者の一人は「工事の規模の大きさからすると、地元負担は難しい」とけん制した。

 那覇軍港を巡っては「遊休化」が指摘されてきた。返還合意後の1978年の本紙記事は、那覇軍港について「5日に1回の割合で貨物船が入ってくる程度」「軍港バースはカラッポという日が多い」と描写する。貨客船がひしめく対岸の商港と比較し「もったいない」と記した。

 軍港の年間の入港数は02年の年間35隻を最後に、公表されない状態が続いている。一方で、オスプレイの飛来もたびたび確認されるようになった。浦添移設後も飛来することになれば、負担につながる可能性がある。

 (知念征尚、與那原采恵)

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