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【記者解説】「サンゴ移植」許可の必要性を審理せず 高裁が国の恣意的裁決を容認


【記者解説】「サンゴ移植」許可の必要性を審理せず 高裁が国の恣意的裁決を容認 判決が言い渡された福岡高裁那覇支部の法廷=15日午後(代表撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 金良 孝矢

福岡高裁那覇支部判決は、大浦湾のサンゴ類移植を巡る農林水産相の是正の指示を適法と判断した。新基地建設に反対する県が具体的審理を求めていた特別採捕許可の必要性について立ち入ることは避け、建設に向けた作業を推し進めたい沖縄防衛局に正当性を与えた形だ。国が裁決と是正指示を恣意的(しいてき)に使うことの容認は、地方自治の今後に禍根を残しかねない。

 高裁は、埋め立て設計変更申請承認の是正指示を巡る昨年9月の最高裁判決の判断枠組みを用いて、不許可を取り消した農相裁決に従わない県対応は法規定に反すると認定した。国による裁決と是正指示の使用と最高裁判決は、行政法学者などから地方自治体の裁量を狭める内容だとして批判が根強い。高裁がこの枠組みを参照したことで、今後もこの判断が踏襲されてしまう懸念が残る。

 高裁判決は、特別採捕許可の必要性以外の項目について検討。サンゴ類移植は環境保全措置で「水産資源の保護に資する」とも言い切った。過去のサンゴ類移植訴訟の最高裁判決の反対意見で示された「サンゴ類移植は極めて困難」との見解に相反するとも言える。

 県は過去の訴訟の経緯などからも上告する可能性は高い。上告した場合、最高裁には改めて許可の必要性要件を具体的に審理する姿勢が求められる。

(金良孝矢)