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【寄稿】辺野古代執行訴訟で沖縄県敗訴 最高裁、司法権の役割反す 徳田博人(琉球大教授)


【寄稿】辺野古代執行訴訟で沖縄県敗訴 最高裁、司法権の役割反す 徳田博人(琉球大教授) 徳田博人(琉球大教授)
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 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、大浦湾側の軟弱地盤改良工事に向けた設計変更申請の承認を巡り、国土交通相が県に代わって承認するため提起した代執行訴訟で、最高裁第1小法廷(岡正晶裁判長)は2月29日、県の上告受理申し立てを受理しない決定をした。県に承認を命じた昨年12月の福岡高裁那覇支部判決が確定し、県の敗訴が決まった。最高裁の対応について、琉球大学の徳田博人教授(行政法)に寄稿してもらった。

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 埋め立て変更承認申請を巡る代執行訴訟で最高裁第1小法廷は、県の上告を不受理とする決定をした。これにより、2023年12月の福岡高裁那覇支部判決が確定し、代執行訴訟においても司法は実質審理をしない先例をつくった。

 1999年改正地方自治法は、国と自治体の関係を上下関係とした機関委任事務制度を廃止し、両者を対等・協力関係とすることで自治体の自己決定権の拡充を図った。

 代執行訴訟における最高裁判断は、改正地方自治法施行以来、初めての判断であり、地方自治の在り方にも大きな影響を与えることから、慎重な実質審理が求められ、大法廷審理が相当であった。機関委任事務制度下の職務執行命令訴訟においてさえ最高裁は、大法廷を開いて知事の意見陳述を認め、実質審査の必要性を示していたからである(96年8月の代理署名訴訟最高裁判決)。

 そもそも憲法上の司法権の役割は、丁寧な事実認定をして論理的理由付けをした上で結論を導くことであるが、今回の第1小法廷決定は、過去の最高裁の先例や憲法上の司法権の役割にも反している。

 第1小法廷は、一連の辺野古裁判において国の判断に追従するばかりであった。沖縄防衛局が行政不服審査制度を利用した私人なりすましを荒っぽい理由付けで認め(2020年3月判決)、国土交通相による関与取り消し訴訟で県には訴訟適格性がないとし(22年12月)、23年9月には、国交相裁決の拘束力を根拠に事実認定を省略する審理により県を敗訴とした。

 今回の上告不受理決定により、自治体の権限を国自ら代わって行使でき、その過程で司法のチェックも機能しない、国の専断(自治権の侵害)を可能とする仕組みが完結したことになる。これに対抗するため、県にできることは市民社会との連携を深め、条例制定をはじめとする自治権限を拡充することであろう。

(行政法)