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【深掘り】表面化は氷山の一角か 繰り返される第三国使用 米軍北部訓練場にオランダ海兵隊員


【深掘り】表面化は氷山の一角か 繰り返される第三国使用 米軍北部訓練場にオランダ海兵隊員 オランダ海兵隊員が「視察」した米海兵隊のジャングル訓練(米軍サイト「dvids」より)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米軍北部訓練場で実施されている米軍の訓練プログラムにオランダ海兵隊員3人が参加していた。関係者によると、公表されていない事例も含め、たびたび第三国軍による基地使用が繰り返されている。日本政府は、第三国の軍隊による使用が認められる場合もあるとの立場だが、判断基準や使用実態は国民に知らされていない。県側は「基地負担軽減にならない」(玉城デニー知事)と警戒感を示す。

 1983年に嘉手納基地で米空軍が航空機への弾薬装着を競う競技会を主催し、韓国軍関係者が参加したことが取りざたされた。政府は「親善目的」として容認した。

 2016年には英国海兵隊の将校2人がキャンプ・シュワブ、ハンセンで米海兵隊の訓練に参加。17年にはフィリピン海兵隊がシュワブで米海兵隊と訓練したと報じられた。ただ、これらは氷山の一角とみられる。

 今回オランダ軍の使用が判明した北部訓練場は、米軍が世界でも沖縄とハワイの2カ所しか持っていないジャングル訓練施設だ。米軍関係者によると、22年には米軍や自衛隊、イギリス軍、オランダ軍などを合わせ約1万4千人が訓練。23年は約1万6千人とした。

 米軍の主戦場が中東の砂漠地帯などに移ったことで、一度は北部訓練場での訓練ニーズは減少した。だが影響力を強める中国を念頭にした「闘い方の変化」を背景に、近年は使用が増加傾向にあるという。

 同関係者は、海兵隊が進める小規模部隊を島しょ部に分散させる「遠征前方基地作戦(EABO)」に基づき、部隊が島しょ地域に分散した場合を念頭に「そういう状況下でも部隊を維持していく訓練が行われている」と話す。北部訓練場の重要性が増している実態が浮かぶ。
外務省によると、米国以外の軍隊が訓練目的で米軍施設・区域を使用することは日米安保条約上、認められない。一方、視察など訓練以外の活動については認められる場合があるとし「個々の事案に即して判断される」と説明している。

 今回のオランダ軍による北部訓練場使用を巡っても、米軍はウェブサイトの説明文のうち「訓練する」の主語に「オランダ海兵隊員」とあったのを削除。オランダ兵参加自体は伏せておらず、訓練目的と取られる表現を避けたかったとみられる。

 外務省関係者は「当然、米軍が『視察』と言えば何でも認めるということではない。きちんと日本政府としても判断している」と強調した。ただ、訓練と視察を見極める基準や許容される範囲について、明文化された取り決めや日米の合意があるわけではない。日本側への通報も法的に定められていない。前述の外務省関係者は「(訓練に当たるかどうかの)判断はゼロベースではない。過去事例の積み重ねが一定の基準となっており、無尽蔵に広がることはない」と語る。

 「積み重ね」があるほど事例があるにもかかわらず、表に出るのはほんの一部だ。第三国の軍隊が基地を使用していること自体が広く知られておらず、まれに報道や米軍の発表で明らかになると国民の間で驚きが広がる。日米両政府の判断基準や使用実態が明らかにならない以上、安保条約が順守されているのか、拡大解釈が進んでいないかなど確かめようがない。

 県にも1日、外務省から、オランダ軍の活動は「訓練ではなく視察」だと説明があった。県関係者は「基地の使用実態が見えづらい」と語る。地元に第三国軍による米軍基地の使用情報が伝わらない実態に懸念を示した。
(明真南斗、知念征尚)