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県議挑戦、女性半数望ましい 矢野恵美氏(琉大法科大学院教授・ジェンダー法)<識者の視点・沖縄県議選2024>(5)


県議挑戦、女性半数望ましい 矢野恵美氏(琉大法科大学院教授・ジェンダー法)<識者の視点・沖縄県議選2024>(5)
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 ―4日時点の県議選立候補予定者75人のうち女性は13人。政治分野への女性進出は少ない。

 「人口の男女比はほぼ半数なので、県民の代表者たる県議に挑戦する女性も半数になることが望ましい。では、なぜそれが難しいのか。沖縄の女性の社会進出自体は全国的にも進んでいる一方、(女性が主に家事育児介護などを担うという)『性別役割分担意識』が強いため、女性だけ仕事に加えて家事育児介護の負担も課される。これらの総時間は男性の仕事時間よりも長く、不公平な状況だ」

 「男女とも政治家になるために競争をしないといけないのに、女性だけが足に重りをつけていて公平な競争にならない。こういった不平等な状況に気づいてほしい」

 ―女性議員が増えると県議会はどう変わるか。

 「県議会は圧倒的に男性が多い。男性議員は育児や介護に関わらない人も多いことから、それらに関わる政策は出にくい。女性議員が増えると多様性が生まれる。また、女性議員が不祥事を起こすと、『これだから女性は』と言われるが、数が多い男性議員の場合はその議員個人の問題とされる。これはとても不公平なことだ。民主主義はいろいろな考えが入ってきて初めて機能する」

 ―性的少数者も政治分野に少ない課題がある。

 「性的少数者も不平等な状況に置かれている。例えば法的には戸籍が同性同士は婚姻ができないなど明らかに権利が制限されている。性的少数者の声を代弁する県議も必要だ。留意してほしいのは、性的少数者が求めている権利は多数者と同じ権利だ。決して特権を求めているわけではない」

 ―立候補予定者への政策アンケートでは、「クオータ制」導入に賛成したのは約半数だった。

 「不平等を是正するためには各政党の自発的な取り組みが必要だが、男性優位の政治状況を放置しようとする姿勢が表れている。2018年にクオータ制度の一環となる『政治分野における男女共同参画推進法』が施行されたが、強制力のない努力義務にとどまっていることも背景にある」

 「実は最も男女平等が進んでいる北欧の国々も、日本と同様にクオータ制は各政党の自発的な取り組みだが、きちんと実行されている。日本は自発的には変えられないなら、法律を改正するなどして義務化する必要があるのではないか。有権者はこの県議選を機に考えてほしい」

 (おわり)