米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で防衛省が20日に着手した護岸工事は、軟弱地盤の改良工事を追加した設計変更に基づく初の本体工事だ。県との事前協議を一方的に打ち切っており、新基地建設を強行する姿勢が改めて鮮明となった。
今回着工した埋め立て予定地北側の「A護岸」を含む護岸工事4件の契約について、入札からわずか約4カ月で変更契約を交わし、約170億円増額した。変更契約は発注者と業者が直接交渉でき、その結果も沖縄防衛局に足を運ばなければ閲覧できない。増額の理由について、変更契約調書には「計画調整」と記しているのみだ。国民の税金を投じるにもかかわらず、明確な説明もなく工事費を増額し、着工したことになる。
総事業費は2014年に説明していた3500億円から約2・7倍の約9300億円に膨らんでいる。その半分近くを22年度までに支出しており、このまま続ければさらなる事業費の増大は不可避だ。
防衛省はA護岸の工法を決める際、3案を比較検討した。採用したのは他と比べ「濁りが発生する」と判断された方式だ。施工の速さを優先した。汚濁防止膜などで拡散を防ぐと説明しているが、本格着工を前にくい打ち試験で水の濁りが目撃された。今後の工事でも濁りの拡大に警戒が必要だ。
政府が工事強行の最大のよりどころとするのは、昨年9月の最高裁判決だ。設計変更承認を巡る裁判だったにもかかわらず、辺野古新基地の論点全てが決着済みかのように振る舞っている。埋め立ての是非を問う県民投票や各種選挙の結果を無視し、全国の米軍専用施設の7割を抱える沖縄県内で負担を固定化することが認められたとは言えない。
(明真南斗)