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【深掘り】相次ぐ性犯罪、止まらぬ「異常事態」 国の初動の鈍さ響く 県は米軍の対策を疑問視 沖縄 


【深掘り】相次ぐ性犯罪、止まらぬ「異常事態」 国の初動の鈍さ響く 県は米軍の対策を疑問視 沖縄  日米2プラス2に臨む(右から)上川外相、木原防衛相、(左3人目から)ブリンケン米国務長官、オースティン米国防長官=28日午後、東京都内(代表撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 今年6月に米兵の性犯罪事案が発生していたことが発覚した。同種事案が相次いで公になる「異常事態」(関係者)で、県や関係自治体は神経をとがらせる。うち2件の発生はいずれも、6月25日に昨年12月の事件が明らかになる前で、政府の初動の鈍さが影響した可能性も拭えない。再発防止の観点からより早い段階での情報提供を求める声も上がっている。

 「以前の事件を受けて米側はきちんと対応して綱紀粛正していたのか」。事件を受け、県幹部は強い懸念を示した。

「対処」を強調した矢先

 外務省は昨年12月の少女暴行事件について、3月27日の起訴段階で再発防止や綱紀粛正を米側に申し入れ、5月の事件についても6月12日に米側に申し入れた。

 7月28日の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)の際、4閣僚による共同発表は「容認することのできない事件や行為を防ぐために、在日米軍によって実施される取り組みを前向きに評価した」と打ち出し、対処を強調していた。

 その対処を進める矢先の新たな事件の発覚。政府関係者は「日米での連携をうまく積み上げている時に壊すようなことは本当にやめてほしい」とため息をついた。

 先の2件が報道された時点では、既に今回の事件も発生していたことになる。日米両政府が一連の事件に幕引きを図ろうとする間も、両政府中枢や担当部局は今回明らかになった沖縄本島内での事件も把握していた可能性が高い。

 再発防止の申し入れや対応策が取られていると強調する様子からは、他にも事件が発生して捜査が進んでいることをうかがい知ることはできなかった。

 県関係者は「政府は本当に解決に取り組んできたのか」と疑問視する。今回の通報はルールに基づいて行われたとの認識を示しつつ「事件発生から3カ月近い。過去の事例でも、通知までの間に別の事件は起きており(送検を待たず)速やかに連絡が必要ではないのか」と訴えた。

飲酒検問の強化だけ

 昨年12月の米兵少女誘拐暴行事件が今年5月に公になって以降、米側はリバティー制度の全部隊での統一や、基地を出入りする兵士に対する飲酒検問の強化、新たな協議の枠組み「フォーラム」の創設、県警と米軍の合同パトロールの提案といった対策を相次いで打ち出していた。

 だが、実際に実施が確認されているのは飲酒検問の強化のみで、性犯罪に対する抑止効果は疑問視する見方がある。

 合同パトロールについてはカウンターパートとなる県警側から、犯罪現場に遭遇した場合には原則として米側が容疑者の身柄を確保することになることを理由に慎重論が根強い。

 「米軍人・軍属等による事件・事故防止のための協力ワーキングチーム(CWT)」に代わるものとされた「フォーラム」も、在日米軍のラップ司令官が7月に提案してから1カ月半が経過しても「調整中」にとどまり、形式さえ見通せない。

 エマニュエル駐日米大使は7月、外務省で面会した日本の岡野正敬外務事務次官に対し「改善策を迅速に考え、問題を迅速に解決する必要がある」と発言していたが、迅速性はうかがえない。

 別の県関係者は「昨年12月の事件以降、米軍はどんな対策を取ったのか見えない。県は機会あるたびにフォーラムの開催を求めている。米軍幹部が発言したことであり、早く詳細を詰めて進めるべきだ」とくぎを刺した。

 (知念征尚、明真南斗)