収入の安定性などから就職先として人気が根強かった公務員だが、景気回復もあり、受験者数は減少の一途をたどる。志願者が限られるため県と国で競合する課題もある中、沖縄総合事務局は県と合同の業務説明会を県外で企画するなど、背に腹は代えられない状況も生んでいる。
受験者数が減る中、県職員採用試験に合格した内定者が辞退するケースは増えている。14年度の辞退者は29人だったが、23年度は63人に倍増した。県が22、23年度の辞退者を対象にアンケートをしたところ、多くが沖縄総合事務局や国税事務所など国の機関に就職するとの回答が多かった。
県総務部の屋我はづき総務統括監は「県職員は行政職でも分野がさまざまで、受験者にとって入庁後のイメージが湧きにくい。国は一つの仕事に携わることができ、働くイメージがしやすい」ことが背景にあると見る。一方で「思ってもみなかった仕事に関われ、その経験を次の部署に生かせるのが県の魅力」と述べ、多様な仕事内容が県の強みでもあるとの考えを示した。受験者とのミスマッチがないよう、積極的に業務内容などを発信する必要性を強調した。
県は内定辞退の対策として、7月に1次試験合格者を対象に若手職員との座談会を開いた。参加者からは「有休は取れるか」「大学で学んだことは生かせるか」「離島への転勤はあるか」などの質問が飛び交った。参加した女性(21)は「実際の仕事をイメージできた。自分がやりたい仕事ができそうだ」とうなずいた。
採用で競合する県と国だが、連携した新たな取り組みもある。県土木建築部と沖縄総合事務局開発建設部は今月11日、東京で建設系技術職員を募集するため、初の合同業務説明会を開く。「パイの奪い合い」(県担当者)となる県内だけでなく、県外での採用活動によってターゲットを広げる狙いだ。
県の「土木」「建築」を受験した人は24年度は計52人で、14年度の92人から大きく減少。県担当者は「技術者不足は災害時の対応に影響が生じるほか、工事の発注業務でも地域住民への影響が出る」と危機感を強める。
総合事務局も同じように受験者数が減少している。担当者は「民間が給料を上げる中、技術職の取り合いになっている。県と協力することで募集を広げ、沖縄に移住したい方に興味を持ってもらいたい」と話した。
(石井恵理菜、與那原采恵)