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【深掘り】トランプ氏勝利 沖縄県、共和党系の人脈をてこにしたい考え 基地問題解決へ訴え


【深掘り】トランプ氏勝利 沖縄県、共和党系の人脈をてこにしたい考え 基地問題解決へ訴え 玉城デニー知事(右奥)のスピーチを聞く参加者ら=9月9日、ワシントンのハドソン研究所
この記事を書いた人 Avatar photo 知念 征尚

 「米国第一主義」を標ぼうするトランプ氏が大統領への返り咲きを決め、米国の安全保障政策にも見直しが生じる可能性がある。

 2017年からの1期目では中国への対抗姿勢を強めた経緯があり、緊張激化や、米軍基地が集中する沖縄で共同訓練が増えるなど基地負担が増加する懸念が横たわる。県は、訪米活動で培った共和党系人脈をてこに、基地から派生する諸問題について粘り強く訴える姿勢だ。

 県はトランプ氏が勝利した場合を見据え、県ワシントン駐在を通じて共和党関係者との関係構築を進めてきた。その成果が現れたのが、9月の玉城デニー知事による訪米活動だ。

 米首都ワシントン訪問時、共和党と近い保守系シンクタンクの代表格とされるハドソン研究所でのシンポジウムを初めて開催した。その場で玉城知事は「日米同盟を認めている」との立場だと繰り返し説明し、安全保障論を語り合える関係であると強調しながらも「日米安保体制の安定的な維持のためには、地元の理解は不可欠だ」と訴えた。基地負担の現状や相次ぐ性的暴行事件の再発防止を呼び掛け、米側も沖縄と向き合う姿勢を見せた。

 県関係者の一人は、この時に知事が示した日米同盟を前提としつつ、過重な基地負担が駐留に悪影響を与えかねないとの観点から改善を求める姿勢が「(今後の米側との対話の)基調となる」と述べた。

 訪米中には、有機フッ素化合物(PFAS)問題や、オスプレイの安全性といった個別の問題に従来から取り組んできた民主、共和両党の議員と面談。議員から当局に書簡を出すといった対応も引き出した。県幹部は、面会人数を重視した過去の訪米と異なり個別の問題に取り組んでいる議員へのアプローチは「かなり効果的だった」と語り、共和党系シンクタンクとのパイプと両輪で基地問題の改善を求めていく考えを示した。

 県庁内では米国の政権交代後も「米軍施策に大きな変更はない」との見方が大勢だ。1期目のトランプ政権でも、米国の駐留負担軽減の観点から在日米軍の削減を期待する見方もあったが大きな変更は生じなかったためだ。県は、個別問題について粘り強く解決を訴えていく構えだ。 一方、石破茂首相も意欲を示していた、日米地位協定の改定論議への影響も注視される。

 石破首相は自民党内での議論を優先させる方針だが、トランプ氏が当選を決めたことで、政府内では「対米交渉となれば、より高い対価を求められかねない」(政府関係者)との声もあり、警戒感が強まっている。

 (知念征尚)