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岡田雪窓の「琉球浪上神社」が里帰り 貴重な山水画を入手 沖縄市の諸見民芸館


岡田雪窓の「琉球浪上神社」が里帰り 貴重な山水画を入手 沖縄市の諸見民芸館
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 明治末期から昭和期にかけて活躍した画家、岡田雪窓(せっそう)(1885年~1964年)の「琉球浪上神社」画幅をこのほど、沖縄市の諸見民芸館の伊禮信吉館長(76)がオークションで入手した。岡田が描いた琉球の絵は県立博物館・美術館にも所蔵されていない。貴重な作品の“里帰り”として注目を浴びそうだ。

 今回、伊禮さんが入手した山水画は幅29センチ、縦170センチ。断崖に立つ波上宮、入道雲、沖合に浮かぶ山原船を背景に赤瓦の家と芭蕉、親子とみられる3人の人物、リュウゼツラン、庭に鶏を配したのどかな雰囲気を醸し出す構成。経年劣化か、やや色はあせている。その絵を張り付けた掛け軸は幅38センチ、縦190センチ。

岡田雪窓画伯の琉球の山水画の入手は県内では初めてではないかと話す伊禮信吉さん=5月24日、沖縄市の諸見民芸館
岡田雪窓画伯の琉球の山水画の入手は県内では初めてではないかと話す伊禮信吉さん=5月24日、沖縄市の諸見民芸館

 岡田は山水画を得意とし、沖縄には1912年から13年にかけ画題を求めて来琉。各地を回り守礼門、首里や壺屋、市場風景、若狭遠望、三線を持った辻の女性、糸満の爬龍船競漕などを写真に収めた。当時の琉球新報に来琉の記事が掲載されている。

 その約80点が沖縄市立郷土博物館に遺族から寄贈があり、専門家の解説を加えた写真図録「郷愁の沖縄―画家岡田雪窓が見た沖縄」として発行された。企画展も開催している。図録は当時の風景をしのばせる貴重な一冊だ。

 伊禮さんは山水画の構図から「絵は写真を基に描いたのではないか」と推測する。定期的に送られてくる図録オークションで見つけ、ためらうことなく購入した。きり箱に収められ、ふたには「自畫琉球浪上神社圖」と墨書され、ふた裏に「雪窓」の署名、押印がある。保存状態はよい。

 岡田はその後、「首里の朝」「那覇の晝」「那覇の夕」の作品にまとめ「琉球初見三題」として1914年、文部省主催の文展に出品して入選、15年にはサンフランシスコ万国博覧会で「琉球二題」が銀賞牌を獲得している。

 伊禮さんは「これだけ琉球に関心を寄せていた画伯がいたことに大変驚いた。貴重な作品の里帰りといってよい。公開を検討していきたい」と、興奮の口調で話した。

 (岸本健通信員)

※注:伊禮信吉さんの「禮」はネヘン