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<記者コラム>四角い箱に何がいる 藤村謙吾(暮らし報道グループ那覇・南部班)


<記者コラム>四角い箱に何がいる 藤村謙吾(暮らし報道グループ那覇・南部班)
この記事を書いた人 Avatar photo 藤村 謙吾

 大学時代から各種SNSと共に人生を歩んできたが、どれも長続きしなかった。浦添市の投稿動画が女性蔑視にあたると問題になり、TikTokをダウンロードしたが、浦添公式チャンネルを見るのみで活用できていない。

 「市民は、この四角い箱の中にいるわけではない。リアルな市民と向かい合うことからスタートしてほしい」。5月30日に市役所で開かれた、浦添市のTikTok動画に関する第三者委員会による答申書手交の場で、委員から松本哲治市長に告げられた言葉だ。

 第三者委員会は、2月から5月まで計4回開かれ、動画の内容と投稿に至る過程が議論された。議論の中で、市が“バズり(話題になること)”にこだわるあまり、「時代遅れ」(委員)な差別的表現が許され、役所の内規まで軽視された実態が明らかになった。

 動画公開に至る過程では、市長や市職員が不適切な内容に待ったをかけた場面もあったが、四角い箱の中で発生した人いきれに浮かされ、次第にブレーキは機能しなくなった。委員の1人は「バズりとセットでなく、プロセスも含めて地に足が着いたやり方であれば、みんなが良いと思えるコンテンツになり得た」と惜しむ。

 仕事柄、SNSに関わらないわけにはいかないが、顔の見えない誰かを意識して右往左往はしたくない。できれば、家族をはじめ、近くの大切な人の顔を見つめ、言葉を交わして過ごしたい。