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宮本、腰痛に苦しみ天仰ぐ 最後までメダルへの姿勢失わず パリ五輪・重量挙げ


宮本、腰痛に苦しみ天仰ぐ 最後までメダルへの姿勢失わず パリ五輪・重量挙げ 男子73キロ級 スナッチで147キロに成功した宮本昌典(共同通信)
この記事を書いた人 Avatar photo 古川 峻

 宮本昌典(沖縄工高―東京国際大出、同大職)が膝から崩れ、頭を地面に垂らした。「悔しい。期待させて申し訳ない」。立ち上がると観客に手を合わせ、天を仰いだ。メダルを懸けた最後のジャークで失敗し、狙った表彰台に立てなかった。4月のワールドカップの成績なら銀メダルだった。

 6月後半の練習で腰を痛めた。「言い訳はしたくない」と話すが、痛みは予想以上に長引き、治療に専念することに。回復しかけた時にまた腰の別の箇所を痛めた。それでも「本番は逃げない。2、3週間でベストコンディションをつくろう」と決めていた。

 理想から遠い低めの重量でスタートしたが、実力伯仲する73キロ級でメダルへ向かう姿勢は失わず、他の選手の動向を見て重量を申告した。最後の試技はメダルを狙える自己ベストの193キロに挑戦した。

 その3本目のジャーク。なんとかクリーンを持ちこたえたが、痛み止めの注射で「立った時点で足がどこにあるかも分からない状態だった」。呼吸を置き、挙げた瞬間に崩れ落ちた。「普段の自分ならあそこで絶対差す」

 東京五輪も本番約1カ月前の扁桃炎(へんとうえん)で状態が悪く、7位に終わった。だが今回は泣きはらすことはなく、「今の力を出し切ることができた」と暗い表情は見せなかった。「お荷物を忘れたのでロサンゼルスは確実に目指す。また期待させて申し訳ないけど、メダルを取る」。いつもの顔でにやりと笑った。

 (古川峻)