災害時の性被害を防ぐために避難所に女性専用避難室などを設けている自治体が、県内では石垣市、北谷町、南大東村の3市町村にとどまっている。琉球新報が県内41市町村を対象に実施した防災アンケートで7日までに分かった。災害時の性暴力は1995年の阪神・淡路大震災から問題視され、2011年の東日本大震災では被害報告も確認されている。平時より声が上げにくい中、女性の安全や安心を確保する対策が求められるが、県内では対応が進んでいない。
北谷町は災害時には町内の1カ所で女性専用避難部屋を設ける。石垣市は約2割の避難所で女性専用のテントスペースを確保しているという。一方で対策をとっていない自治体は「場所の確保が難しい」と答えた。
災害時の女性への配慮内容(複数回答)について、最も多かったのは「生理用ナプキンの備蓄」で30市町村だった。「専用トイレ」が24市町村、「授乳スペースの確保」が20市町村、「更衣室」が19市町村だった。
東日本大震災の際の避難所などで女性や子どもへの暴力について調査した「東日本大震災女性支援ネットワーク」によると、82件の被害報告があり、うち同意のない性交強要は10件、わいせつ行為や性的いやがらせは19件あった。災害時は「女性や子どもの脆弱(ぜいじゃく)性が増強する」ため対策が不可欠としている。
NPO法人「ウィメンズネットこうべ」の正井禮子代表理事(74)は「被害はもっと大きい」と語る。物資支援の代償として性行為を求められた事案や、被害を訴えても「加害者も被災者だから」と我慢を強いられるなどのケースがあったという。
内閣府男女共同参画局の東日本大震災後の調査では、57・9%の自治体が女性への暴力対策を「行わなかった」とし、「おおむね行った」(5%)、「一部行った」(12・9%)を加えても2割に満たなかった。正井さんは「安全な環境を整えることが大前提だ。避難所運営や防災を考える場はいまだ男性が多い。女性の参画が多角的視点を生み、被害防止への対策につながる」と力を込めた。
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アンケートは1月19日、県内41市町村の防災担当部署にファクスや電子メールで調査票を送信。2月1日までに全市町村から回答を得た。
(新垣若菜)