沖縄の人気企業3社の幹部が語る「女性活躍」と「働き方改革」


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琉球銀行の金城棟啓会長、りゅうせき商事の富原加奈子社長、サンエー人財育成室長の玉城むつ子室長が11月5日、那覇市内で開かれたシンポジウムに登壇した。沖縄を代表する3企業の経営者や人材育成部門のトップが考える「女性活躍」「働き方改革」とは-。

(左から)玉城むつ子サンエー人材育成室長、富原加奈子部会長、金城棟啓琉球銀行会長

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この日のシンポジウムは、沖縄県経営者協会女性リーダー部会の「かふーあがちゅんプロジェクト」が会員企業約300社を対象に実施した「働く女性の意識調査」の成果を共有するために開かれ、会員企業の経営陣や管理職、女性リーダー部会のメンバーらが参加した。

冒頭の3人をパネリストに迎え、沖縄大学の豊川明佳准教授がコーディネーターを務めた。パネリスト3人の発言の一部を紹介する。
 

「県内における働く女性の意識調査」の結果を受け、シンポジウムに登壇した(左から)豊川明佳沖縄大准教授、富原加奈子部会長、金城棟啓琉球銀行会長、玉城むつ子サンエー人材育成室長=2018年11月5日午後、那覇市のダブルツリーbyヒルトン那覇首里城

「男性が変わらなくてはいけない」金城棟啓琉球銀行会長

金城棟啓琉銀会長

働き方改革や女性活躍がテーマになる背景には「人口減少」と「ITの進化」の二つ(の理由)がある。日本は戦後、人口が増えていく前提で経済や労働、法律など社会の諸制度がつくられてきた。これからは人口が減っていく時代に合わせなくてはいけないのに、それができていない。

これら二つのパラダイムシフトの最中、われわれは自身の働き方を見直さないといけない。女性が子育てしながらしっかり働き、昇格していく環境をつくることだ。琉銀では登用と育成の両面から取り組んでいる。今年、副支店長クラスに上がった27人中、男性は8人、女性が19人。今後は女性役員の候補生の育成に取り組みたい。

男性が変わらなくてはいけない。男性が家事も育児も介護も分担する時代。産休・育休をマイナス評価にせず、こういうことをやった人が企業のトップになる環境をつくっていくべきだ。経営者がそういう意識に変わることが、企業として、国として生き残っていける方法だと思う。
 

男女問わず助け合える組織づくりを/富原加奈子りゅうせき商事社長

富原加奈子りゅうせき商事社長

りゅうせき商事は従業員330人のうち正社員は280人(85%)で残りがパートや学生アルバイトとなっている。女性管理職が31%でチーフ以上は48%だ。

経費の圧縮より働く環境を良くすることを目的に、残業の抑制に取り組んできた。2013年には1人当たり月18・3時間だった残業が、17年は9・8時間となり、月8・5時間減った。12カ月、280人で計算すれば、年間約3万時間に上る。

ICT化でタブレットを150台導入し、社内連絡を独自の「社内SNS」にした。会議は1時間に定め、その場でペーパーレスで議事録を作り終了する。本社事務所の消灯・施錠時間も午後7時としている。仕事のスピード感や一人一人の時間に対する意識が変わった。

女性が活躍するためには働き方改革を実現し、誰でも意欲的に働ける環境をつくるのが近道だと思う。子育てや介護が、残業が減っただけで成り立つわけではない。急に休んでも組織に迷惑をかけない態勢が求められている。

明日からできることとして、身近なコミュニケーションを意識的つくっていくことに取り組んではどうか。夜の飲み会ではなく、ランチタイムなどを利用して真正面から会話することは非常に大事だと思う。自分の思いは言わないと伝わらないし、現場のことは現場がよく分かっている。風土としてコミュニケーションを根付かせる環境づくりが大事だと思う。

今回の意識調査で会社に取り組んでほしいことの一つに「異業種交流」があった。女性は外に出る機会が少ない。他の人たちや組織を知らないことで、自信が持てないのではないか。あらゆる面であらゆる層が交われる場面をつくれないかと思う。

男女、障がいの有無など関係なく当たり前に助け合って楽しく、属人化しない形で生産性の高い組織をつくることが今後の少子高齢化の時代、必要になってくるだろう。

社員の声を聞いて改善続ける/玉城むつ子サンエー人財育成室長

玉城むつ子サンエー人財育成室長

入社以来23年間取り組んできた採用・教育・人事制度改革のプロジェクトを紹介したい。私は1995年、「就職氷河期」の時代に入社した。25年前の小売業は女性活躍どころか非常に厳しい労働環境。恥ずかしい話だが、過去には入社3年後には48%が退職しているという状況があったほどだ。

(私の入社)当時は正社員の離職率が13%だったが、直近では3%を切り定着率も上がってきた。何をしたかというと、社員の声をとにかく聞いている。全社員の意識調査は3年に1回続けている。事務局は店舗を回って社員の声を聞き、社員がどんな気持ちで働いているのか、どこに問題あるのか、大量のデータをとって経営課題としてまとめ、一つずつ取り組んできた。

育児休業制度、時短勤務制度などは、法改正に乗っかりながらもニーズを上回る制度を導入し、辞めざるを得なかった人が辞めずに済むようになってきた。女性管理職の割合17%超えるようになってきた。

女性は男性と同じように働き評価されたいと思っているが、現実的には家事育児の負担が女性に集中している。男性の働き方をしっかり改善していくことが必要だ。能力は男女で変わらないしが、女性はよく言えば謙虚。つまり遠慮がちで自信がない。

女性は「チャンスがある」と言われても本人の意思だけを尊重すると手を上げづらいものだ。だからこそ活躍するステージを社として設けることが大事だと思う。

サンエーの事例としてはマツモトキヨシをフランチャイズで経営するドラッグ部は女性だけで運営している。頼る男性いないためか、店舗運営や人材育成など連携も上手で業績も高い。他部署と比べると労働時間も短く、いい部署がつくれている。

活躍するステージを用意すれば女性は「やりたい」と素直に言える。背中を押してあげるのが大事だと思う。一人一人が持っている能力を最大限に発揮することは個人の成長になるし、会社の生産性も上がる。不安を抱える女性が多いので、トップが「責任を取るから思い切りやりなさい」と言ってあげると伸び伸び働ける。

ドラスティックに変えていくのは一つの手段だが、社員は入社してから退職まで約40年働く。その間にライフステージは変わり、新しい価値観の人も入ってくる。毎年毎年こつこつと声を聞き、あきらめずに改善し続けることで、風土や組織が変わっていくと感じている。

◇記事:知花亜美(琉球新報文化部)、佐藤ひろこ(琉球新報Style編集部)
※2018年11月11日付の琉球新報紙面を一部加筆修正しました。