7月上旬、夜明けの金作原国有林(鹿児島県奄美市)に、認定エコツアーガイドの越間茂雄さん(55)と入った。
懐中電灯の明かりを頼りに、毒蛇ハブを恐れながら林道をゆっくりと歩く。「コホー、コホー」。午前4時50分、暗闇にフクロウの仲間リュウキュウコノハズクの鳴き声が響いた。
10分もすると空が白み、リュウキュウアカショウビンの声が交じる。森を進むと、夜行性のアマミハナサキガエルが跳ねて茂みに逃げ込んだ。樹上ではケナガネズミがこちらを警戒するように鳴いた。
山の向こうが赤く染まり始めた。見上げると、ヒカゲヘゴの葉がくっきりと空に浮かび上がった。アカヒゲが「ヒーヒヨヒヨ」とさえずり、ルリカケスがそれに続く。奄美大島固有のオーストンオオアカゲラもあちこちで木をつつき、夜明けの森に鳥たちの大合唱が響き渡った。姿は見えなくても生物の気配を至る所に感じる。
日光が森に差し、一気に汗ばんだ。セミが一斉に鳴き始め、途端に鳥の声がやんだ。時計を見ると午前5時25分。わずか30~40分間に多様な生物の営みを体感できた。「何度案内しても飽きることがない」。越間さんの言葉にうなずいた。
(南日本新聞・藤﨑優祐)
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