シイノキ、ホルトノキ、タブノキ…。多様な照葉樹が日光に当たろうと斜めに伸び、緑のトンネルを作っていた。森に入るまでの突き刺すような強い日差しとは一転、ひんやりとした心地よい空気が肌にまとわりつく。7月上旬、自然保護活動を担うNPO法人「徳之島虹の会」の松村博光さん(74)の案内で徳之島町大原から天城町三京へ向かう林道を歩いた。
林道の門をくぐり、まず目に飛び込んだのが照葉樹のオキナワウラジロガシ。板状に伸びた板根(ばんこん)が波打ち、どっしりと大木を支える。堂々とした姿に圧倒されていると、近くをアカヒゲが通り過ぎた。松村さんは「姿だけでなく、鳴き声もとても美しい鳥」と目を細める。
夜は池村茂さん(65)の案内で徳之島町山の林道に入った。最初に出会ったのは、オビトカゲモドキ。恐竜のようなりりしい顔で、よちよち歩く姿が愛らしい。ゆっくり車を進めると、斜面の草むらでアマミノクロウサギがじっとしていた。「あれでも隠れているつもり」と池村さんが笑う。
林道を抜けると特産のサトウキビが葉を茂らせ、人家の明かりがともる。人の暮らしのすぐそばに自然が広がる。それが徳之島だ。
(南日本新聞・中野あずさ)
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