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伝統と新時代表現 国立劇場おきなわ 多彩に20周年公演


伝統と新時代表現 国立劇場おきなわ 多彩に20周年公演 第2部で華やかに披露された新作組踊「祝寿の舞」
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 13日に開催された国立劇場おきなわ20周年記念公演「祝いの宴」。開場記念公演時にも披露された「神歌(おもろ)・こねり」「入子躍(いりこおどり)」をはじめ、人間国宝がそろい踏みした「かぎやで風」や古典音楽斉唱、新作組踊「祝寿の舞」が上演された。伝統の継承と劇場の新時代を思わせる公演となった。

「入子躍」では若手実演家らが円を描いて回り、踊り手が入れ替わりながら舞った
=13日、浦添市の国立劇場おきなわ(ジャン松元撮影)

 「神歌・こねり」で厳かに幕開けした。おもろとは12世紀から17世紀に奄美や沖縄で謡われていた「古代歌謡」。現在歌い継がれる「王府おもろ」から「しょりゐと節」を安仁屋真昭が披露した。舞の手である「こねり」付きの「あおりやへが節」は、眞境名直子が作舞した踊りを、比嘉さつきが神秘的に舞った。

 「入子躍」は、琉球王朝崩壊後に伝承が途絶えたが、又吉靜枝の構成原案と金城厚の考証で文献を元に復曲し、開場記念公演で上演した演目。約30人の若手実演家が円を描いて回り、踊り手が入れ替わって舞った。太鼓に合わせて響くアカペラの歌声はみずみずしく、舞も見どころが多かった。今回も構成を務めた又吉は「20年の年月を感じた」と目を細めた。

 2部では、新作組踊「祝寿の舞」(金城真次作、振付、演出)を披露した。美里親雲上(佐辺良和)は、七十三歳の生まれ年を迎える母(新垣悟)の御年日祝儀(うとぅしびすーじ)を踊りで喜ばせるため、いとこで御冠船で踊り手を務める玉千代(田口博章)に相談する。玉千代は、乙鶴(与那嶺綾子)と真亀(西村綾織)の姉妹を招待し、家族親族も含めて踊りを披露した。

「あおりやへが節」を神秘的に舞う比嘉さつき

 男性の踊り手が多い時代が舞台の作品で、姉妹の踊り手を見た母が「世の中は変わっていくもの。女性の踊りも広めて」と語り、自らも踊り出す場面は印象的だった。女性立方の起用にも新たな風を感じた。子孫繁栄を歌った「揚高祢久節」での幕締めには劇場のさらなる発展を願う思いが伝わる。

 一方、唱えで不自然な間があいた場面や、演奏ミスも見受けられ、劇場の節目を祝う作品だけに残念な思いもした。

 (田吹遥子)