東陽バスが昨年9月に実施した大幅な減便と最終便の繰り上げを伴うダイヤ改正に、県内のバス関係者は驚きを隠せなかった。
競合他社に比べ、本島の東海岸側の交通網に強みを持つ東陽バス。乗客数が多い“ドル箱路線”の減便に踏み切ったことに、人手不足と「2024年問題」の深刻さが浮き彫りになった。
最終便は、ほぼ全便で約1~2時間繰り上げになるなど市民生活に影響が広がっている。
「どうしても間に合わない」。運転手の終業から翌日始業までの休息期間は従来、最短で8時間を下回らなければ違反ではなかった。しかし法改正により4月から1時間延ばさなければならない。早朝は通勤・通学で利用者が多いため、便を削ることは難しい。人手不足感が強まる中、9時間の休息期間を確保するためには、必然的に利用者が少ない夜の便で調整するしかなかった。
「選択肢はなかった」。東陽バスの担当者は表情を曇らせ、ダイヤ改正に至った経緯を振り返った。
他社も続いた。琉球バスは、1月9日に南部の4系統のダイヤ改正をホームページで発表した。「2024年問題への対応」として「最終便の時間も変更しております」との案内を出した。うち50番百名線では、上下いずれも約30分前倒しした時間に変更。勤務シフトの関係で午後勤務者が翌日の午前出勤となることもある。
担当者は「休息期間が増えて、働く時間が少なくなる。最終便は従来のものを残したかったが、できなかった。今後も最終前倒しの便が出てくる可能性はある」と説明した。
最終便の繰り上げは、特に夜間勤務者や定時制高校生などが影響を受けやすい。関係者によると、過去にも最終便を変更したことで「従業員が勤務できなくなる」とスーパーからの相談も寄せられた。東陽バスの今回の変更でも、定時制の一部の生徒が影響を受けているという声があった。
東陽、琉球バスの担当者は「今までのように朝から晩まで走らせにくくなる。それでも1人から1.5人が必要になる感覚だ。何とか改善手段を考えていかなければならない」と声をそろえた。
現役運転手の1人は「全社的に最終便の前倒しを検討する動きが広がるだろう」と見通す。
「確かに夜の便の乗車率は低いが、公共交通としてのサービスの低下は顕著だ。これでは車移動を選択する人が今よりも出てくるかもしれない」
運転手はメモ帳にまとめた過去と現在の勤務時間を見比べながら眉間にしわを寄せ「悪循環にならなければいいが」とつぶやいた。
(謝花史哲)