主要4社が競合する沖縄本島の路線バスのうち、4月から東陽バスが沖縄バスの子会社としてグループ化することが1月に決まった。
「知らなかった」。両社の役職員に決定が伝えられたのは発表の数日前だった。乗客数減少による収益悪化や燃料費などの経費増、深刻化する人手不足など、多くの難題を抱えるバス業界で急転直下、再編が進んでいる。
具体的な交渉が始まったのは昨年夏ごろだ。東陽バスの新入勝行社長は「後継者不在の今後を考え、会社を継続させるための選択肢として相談してきた。私自身の年齢的なタイミングもあった」と明かした。
ただ、現場では運転手の労働時間に上限が設定されることで、より人手不足感が強まることが予想される「2024年問題」の対策に追われていた。他社に先駆けて減便を伴うダイヤ改正作業に着手したが、労務管理など新たな課題が解決したわけではなかった。
水面下で交渉してきた新入社長は後継者問題を一番の理由に挙げつつ「さまざまな課題がある中で一緒になった方がメリットがあると判断した」と合併合意の舞台裏を振り返る。合併による競合路線の整理や経営の効率化を狙い、かじ取りを沖縄バスに託した格好となった。
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バスや沖縄都市モノレールの労働者でつくる私鉄労連沖縄の喜屋武悟委員長は「これで効率の良いダイヤや等間隔運行とすることができる。非常にプラスとなると思う」と期待感を示す。その上で、県内のバス利用者が伸び悩む中で「2024年問題」への解決案として「全社共同運行することが理想的だ」と指摘。全体的な路線や運行の在り方を見直す必要性に言及した。
ただ、運転手のなり手不足という根本的な問題は横たわったままだ。県バス協会から聞き取りした県によると主要4社の乗務員数は22年度末時点で、新型コロナ流行前の19年度末時点から103人(12%)減の758人で800人を割った。
人材確保は急務だ。沖縄バスや琉球バスは自動車学校の練習場を借り、運転体験会を開催するなど掘り起こしに力を入れる。
「まずは運転の楽しさややりがいを知ってもらえたらと思っている。会場で履歴書を提出する人も出てきた。地道に続けていきたい」。沖縄バスの担当者は説明する。
公共交通機関としての利便性の向上と運転手雇用の維持。長時間労働の是正など働き方改革が柱となる2024年問題を前に、路線バス経営は正念場を迎えている。
(謝花史哲、普天間伊織)