人手不足による路線バスの減便。公共交通に頼ってきた県民だけでなく、運転手の生活にも影を落としつつある。
「子育て世代には賃金が低すぎて働けなくなる」。長時間労働の是正の流れの中で、手取り額が目に見えて減っている。経歴10年以上のベテラン運転手は数年前と現在の給与明細を見比べ、「2024年問題」の先行きに表情を曇らせた。
4月からバス業界に本格適用となる長時間労働や休息期間の規制強化は、労働者の過重な負担を和らげることになる。ただ人手不足感が強まるため各社とも対策として減便を進める。
過去に月100時間以上の労働を経験してきた運転手は「確かに大変だったが、収入は約束されていた」と振り返る。減便実行後の数カ月は長時間労働が改善した一方、明らかに給料が減ったため手放しでは喜べない。
さらに、給与に反映されない「中休み」が増える可能性を注視する。朝の通勤時間帯を運転した後、一度退社し、夕方の退勤時間帯を再び受け持つ、業界で「中休(ちゅうきゅう)」と呼ばれる働き方だ。
関係者によると、通常は午前と午後勤務の交代制。琉球バスや沖縄バスは1日ごとに入れ替わるのが一般的という。東陽バスは1週間ごとに午前と午後を交互に勤務する方式を採用している。
「中休」は実働6~7時間で所定内労働で済む場合が多い。中休の間にいったん帰宅することもできるが、出退勤で時間を奪われるよりはと、事業所で休む運転手も多い。ただ、夕方には勤務が迫るため「ただ待機するしかない」(男性ドライバー)。
勤務に含まれない「待ち時間」が精神的な負担感を上げる。「乗務員の多くは残業代に頼っている部分がある。中休が増えれば手取りが10万円目減りすることもあり得る」
これまで1日交代制を取り入れてきた沖縄バスでは4月から東陽バス方式を導入する方向で労働時間の改善を見込む。ただ運転手の1人は「基本給は決して高くない」と本音を漏らす。月100時間労働の実態が残っていることを明かしつつ「過重労働だが、収入を考え、働くことを求める人は実際にいる」と複雑な心境を口にした。
国は昨年4月から月60時間を超える時間外労働の割増賃金を引き上げた。「2024年問題」について、沖縄バスの運転手は「基本給が高めの県外大手や、運転手が多い企業はいいかもしれないが、中小の労働者にとっては厳しい点がある。制度がいいのか悪いのか、分からない」と吐露する。
「超勤割り増しをさらに上げることの方が先ではないかとも思う」と労働者側の賃金が上がる仕組みづくりを求める。「公共交通への支援策を考えてほしい」
(謝花史哲)