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【深掘り】「ヒージャー」生産追い付かず、料理店「仕入れ値2倍」 観光客にも人気 沖縄


【深掘り】「ヒージャー」生産追い付かず、料理店「仕入れ値2倍」 観光客にも人気 沖縄 ヤギ刺し(写真手前)とヤギ煮付け=8日、糸満市西崎の「居酒屋山羊処べぇ~べぇ~べぇ~食堂」
この記事を書いた人 Avatar photo 玉寄 光太

 コロナ禍で需要が落ち込み、離農する農家が増えていたヤギ生産が一転、盛り上がりを見せている。行動制限がなくなったことで外食の機会が増えたり、沖縄を訪れる観光客が「ヒージャー汁」を求めたりしたことで需要が回復。現在は生産が追いついていない状況だ。(玉寄光太)


 一方、セリ価格の上昇によって苦境に陥っているのがヤギ料理を提供する飲食店だ。南部家畜市場によると、コロナ前の2019年までは雄1キロ当たり千円前後で競り値は推移していたが、21年は859円に落ち込む月もあった。しかし、需要回復を受け、23年10月には1580円と上昇。現在も高止まりが続く。

 県内でヤギ肉の加工や卸売り業を手掛ける企業の担当者によると、21年夏ごろの1キロ当たりの仕入れ値は850円ほどだったが、22年に入ってからは値段が徐々に上がり始めた。「昨年10月以降は特に高騰している。値段の高騰が続き、採算が取れないことで閉店するヤギ料理屋も出てきた」(担当者)

 県によると、21~22年に、ヤギ農家は114戸(11・3%)減少した。それに伴い、飼養頭数も6年ぶりに1万頭を割り込んだ。現在の農家の総数は約1129戸で、1回の競りで約130頭前後が出荷されているが、需要に対して供給が追いついていない。コロナ禍を経て需要と供給のバランスが崩れたことも、競り価格の上昇の一因だという。

 糸満市西崎のヤギ料理専門店「山羊処べぇ~べぇ~べぇ~食堂」は、本島全域から客が訪れる人気店だ。平田健代表は「お客が多く来るのはうれしいが、以前に比べて仕入れ値が2倍近く上がっており、経営が厳しい」と吐露。「価格転嫁は客離れにもつながるため難しい。常連客は『値段を上げてもいい』と言ってくれるが、できればそれはしたくない」と話す。

 同店では、利益率の高いサイドメニューの、注文が少ない持ち帰りは断るなどして、店を維持しているという。平田代表は、他のヤギ料理屋も同じ状況だと指摘した上で「国や県はヤギの生産者が増えるよう、農家への支援を手厚くするべきではないか」と訴えた。

 JAの担当者は「ヤギ料理は沖縄の大切な食文化。その文化を守るためにも、生産振興に努めていきたい」と語った。