prime

農地の適切な活用とは 新里えり子(農業者・農福連携技術支援者) <仕事の余白>


農地の適切な活用とは 新里えり子(農業者・農福連携技術支援者) <仕事の余白>  新里えり子
この記事を書いた人 Avatar photo 外部執筆者

 誰にでも簡単に始められそうで、簡単にいかない難しい職業の一つが農業である。作物を育て、収穫するまでに時間がかかり、即収入にはならない。病害虫と戦い、気候や市況相場に左右され、価格が思い通りにならないことも多々ある。

 先行投資が必要だが、収量と収入が確実ではない。農地確保、労力の効率化、栽培技術力、販路、経営力、全てが求められる。中でも新参者にとっての最初の壁は農地の確保である。私が新規就農する際は、やはり農地の確保が思い通りにならず、スタートに遅れをとった。

 全国的にも農業者の高齢化が進み、耕作放棄地が増え、再生困難になる農地の荒廃化が待ったなしの課題だ。沖縄においては耕作放棄地を使わせてもらえない現状がある。「いずれ息子か孫が帰ってきた時に使うかもしれない」「農地を貸したら返してもらえないか、補償金を払わされる」「そのうち高くで売れる」という誤解が今もなおあるようだ。

 農地は農業以外には利用できないのが原則だ。現在は公的な農地中間管理機構を通して契約期間を定め、返却時には原状回復の条件等で農業者との間で農地の賃貸借が可能である。農地を使用せずに放っておくと再生困難な荒廃農地となり、時には不法投棄がなされ、災害時には周りへの被害を及ぼし厄介なことになる。

 農地の所有者は、農業をするか農地を貸すか、農地を適正かつ効率的に利用する責任を全うしていただきたいと切に願う。

新里 えり子 しんざと・えりこ

 農業者。うるま市在住。石垣市出身。大学卒業後、IT系会社を経て、就農を目指し県立農業大学校で学ぶ。卒業と同時に新規就農。沖縄在来種山葡萄のワイン「涙(なだ)」の原料やその他果樹を栽培。障がい者の就労・雇用の機会を支援する農福連携技術支援者としても活動中。