宿泊税に関して県が作成した税率などの案について、観光業界から「業界との丁寧な議論が必要」「そもそもの需要調査が不十分」など、疑問の声が湧き起こっている。2026年度の導入を目指す県は識者や関係団体の代表らで構成する検討委員会で案を示し、理解が得られれば条例制定に向けた議会提案を進めたい意向だが、先行きが不透明になってきた。
県は14日の本年度3回目の検討委に向け「税率2%、上限2千円」とし、修学旅行生を除き課税免除はしないとする県案をまとめた。独自導入する市町村との税収配分について県2、市町村3とすることを含め、石垣市など導入予定の自治体に説明に回っていた。
議論に入れない
観光業界は導入後の税収の使途について、観光事業者らも対象にした十分な調査を実施すべきだと求めてきた。要望した調査が実施されないまま、県案を示したことに不満が広がっている。
一方の県は、市町村を対象に実施した需要調査を県案に反映させたことなどで、業界からの注文には応えようとしていたとの認識だ。
ただ、税が導入されれば特別徴収義務者としての業務を担う宿泊事業者らを束ねる業界は納得していない。事業者の間にも税率や上限に多様な意見があり、調査によって使途を明確にした上でなければ、議論に入れないとの意見もある。
県ホテル協会の坂本公敏副会長は「業界の意見がまとまらないままでは進められない。使途を明確にしてもらわないと」と訴える。
県案の基になった需要調査の対象が自治体のみだったことについて、沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の下地芳郎会長は「観光業界や県民も含めた丁寧な需要調査が必要になる。宿泊税を何に充て、どういう観光地を目指すというプロセスが重要だ」と述べ、十分な手順を踏むよう言外に促した。
県案が県民の課税免除を想定していないことについても「離島県の実情を踏まえたものだと言えるのか、今一度議論が求められる」と指摘した。
年度途中の導入も
県は宿泊税の26年度中の導入を目指している。25年度は周知期間とするため、来年の県議会2月定例会に条例案を提出したい考えだが、14日の第3回検討委で理解が得られない場合、スケジュール通りに進まない可能性がある。早めの導入を望む5市町村と足並みが乱れる恐れもある。県の担当者は「導入は26年度中としている。全国の事例にもあるように年度途中の導入もあり得る。周知期間も必ずしも1年というわけではない」と説明し、6月以降の定例会提出も想定されるとした。
県案については、OCVBが取りまとめた業界の意見を反映していたとも説明。担当者は「第3回で理解を得られることが理想だが、場合によっては第4、5回もあり得る」と業界との議論を重視する意向を示した。
(與那覇智早)