有料

校長から若手教諭に沖縄戦教材を“継承”「沖縄や皆、変わてぃ行ちゅる」住民の思い読んだ詩で授業 


校長から若手教諭に沖縄戦教材を“継承”「沖縄や皆、変わてぃ行ちゅる」住民の思い読んだ詩で授業  沖縄戦中の住民の気持ちを詠んだ詩を道徳の授業で活用した大村彩佳教諭=6月20日、那覇市の神原小学校
この記事を書いた人 Avatar photo 高橋 夏帆

 戦争体験者の減少に伴い、沖縄戦を学ぶ平和教育のあり方の模索が続く中、那覇市立神原小学校で、校長から若手教諭へ沖縄戦に関する教材の“継承”があった。教材は、県出身の元大学教員で戦後生まれの立場から戦争の悲惨さを伝える詩を沖縄方言で詠んだ名嘉憲夫氏の作品。宮城信夫校長(56)が長年、国語の授業で使用してきた。6月20日、教員6年目の大村彩佳教諭(28)は6年生の道徳の授業で詩を題材にした。児童は詩を通して沖縄戦体験者の心情に迫り、平和への思いを巡らせた。

 詩の題名は「沖縄や皆、変わてぃ行ちゅる(沖縄はみんな変わっていく)」。沖縄が戦場になり、森や浜、住民の姿が変わるだけでなく、住民の心までも変わり果てた様子を詠んだ。

 高齢化する戦争体験者を招く平和学習が困難になりつつある現在、宮城校長は学校教育で若い教員が沖縄戦を語り継ぐ必要性を感じ、大村教諭に詩を紹介した。宮城校長は詩を通じて沖縄戦中の住民の生活や気持ちを追体験してもらおうと、15年ほど前から活用してきた。

 児童は調べ学習で沖縄戦を学んでいたことから、大村教諭は「戦争中の住民の気持ちに迫り、命の大切さを学んでほしい」と企画した。大村教諭が道徳で沖縄戦を扱ったのは初めてだった。

詩を通して沖縄戦体験者の心情を考える神原小学校の6年生ら=6月20日、那覇市の同校

 6月20日、児童たちは詩を音読して、一節「我っ達ぬ心ん変わり果てぃてぃ(私たちの心も変わり果てて)」などの感想として「寂しい」「苦しい」と語った。大村教諭が住民の心の変化を質問すると、児童らは「家族が離れ離れになり、生きることを諦めたのでは」「命の大切さを忘れてしまった」と答えた。

 授業の締めくくりで、児童らは今後どう行動するのか考えた。ある児童は人を傷つける言葉を安易に使ったことを振り返り「後悔している。二度と使わない」と話した。別の児童は「若い世代が勇気を持って、戦争を止められるようにしたい」と語った。

 宮城校長は沖縄戦教育がマンネリ化し、児童に合わせた授業の工夫がおろそかになることを危惧する。「先生も子どもも、いろいろな角度から平和について考えてほしい。子どもたちはきっかけがあれば、一つの事柄から学びを広げられる」と語った。

 大村教諭は「自分たちが授業で語り継ぐことは、平和をつくるために大切だと感じた。子どもには自分たちがどうしていくのかを考えてもらいたい」と話した。

(高橋夏帆)