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ハーレム設定「あそびにいくヨ!」沖縄舞台の意味、原作より薄く <アニメは沖縄の夢を見るか>(9)


この記事を書いた人 アバター画像 琉球新報社
挿絵・吉川由季恵

 『あそびにいくヨ!』(2010)も前回取り上げた『はるかなレシーブ』同様、沖縄を舞台に露出度の高い美少女キャラが登場する。バストやプロポーションが強調されるちょいエロ系のラブコメで、テレビ放映時には過激なシーンがカットされていたと思う。原作は沖縄出身・在住の神野(かみの)オキナによるライトノベルだ。

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 『はるかな―』は意図的に男性キャラを排除していたが、『あそびに―』は一種のハーレム・アニメになっている。那覇の牧志高校に通う嘉和騎央(かかずきお)の家に、猫耳と尻尾を持つ天然で豊満な宇宙人エリス、騎央の幼なじみで活発な真奈美、きゃしゃで内気な同級生のアオイら、タイプの異なる複数の美少女が同居する。

 高度なテクノロジーを持つ猫種宇宙人の先遣調査員であるエリスに対し、真奈美はCIAの試用エージェント、アオイは日本の入国管理局に雇われた凄腕(すごうで)の殺し屋と、それぞれが「国家的」背景や過去を持っている。そこに宇宙人との理想的な接触を夢見るカルト集団や、軍隊顔負けのメイド組織にかしずかれて猫耳教団を率いる大富豪の孫娘、アメリカが極秘に取引している犬種宇宙人などが絡み、外交をめぐる陰謀が宇宙空間での異星人同士の戦いへと発展する。

 こうした設定や展開は、神野が原作で示唆していたように、1980年代を席巻した「うる星やつら」シリーズを思い出させる。同シリーズでは、猫耳ならぬ鬼の角を持つビキニ姿のラムが、浮気者の男子高生・あたるにほれてその家に同居していた。また宇宙人の科学メカや戦闘が描かれ、大富豪の面倒家はドイツ風の機甲師団を配下に持つ。当時としてはギリギリのちょいエロシーンもあり、ハーレム的設定も含めて本作の源流の一つと言えるだろう。

 さらに『あそびに―』には海外名作ドラマのパロディ、ガンマニア、邦画オタク、中野ブロードウェイ、原型師などのネタも惜しみなく盛り込まれる。「文化水準は、当事者たちが高いと思っているモノよりも、低いと顧みないモノにこそ現れる」というエリスのセリフを地で行くような、遊び心満載のアニメとなっている。

 劇中には与儀の県立図書館、A&W、コザのコッコロコハウス、瑞泉、オリオンビール、のまんじゅうなど、さまざまな沖縄の風景風物が登場する。ただし嘉手納基地からのエリス奪還作戦による爆発が「給油施設の事故」と隠蔽(いんぺい)される序盤以外、沖縄を舞台とする意味は薄い。神野の原作ではもう少し沖縄的な背景や感情が描かれていたが、その点については機会を改めて論じたい。

(岡山大学大学院非常勤講師)