家も働く場所も一瞬で奪われた…宮城・気仙沼で被災した男性が伝える逆境の乗り越え方


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被災から10年、当時の心境や今後の教訓を話す気仙沼市の岡本貴之さん=25日、県内の児童自立支援施設

 東日本大震災から10年となる3月11日を前に、宮城県気仙沼市で製氷業を営む岡本貴之さん(38)が25日、県内の児童自立支援施設で講話を行った。街が壊滅的な被害を受け、立ち直れないほど落胆した日々から10年。復興を目指し、被災地から立ち上がった人たちの取り組みや思いを伝えた。さまざまな事情を抱え入所する中学生たちは、真剣なまなざしで聞き入っていた。

 プロジェクターで震災前の気仙沼市を紹介した後、濁流となって押し寄せる津波の映像が上映されると、一変した街の様子に生徒たちは息をのんだ。岡本さんは「住む家も働く場所も、なすすべなく一瞬で奪われた」と当時の心境を明かした。

 被災後に街おこしの一環で「氷の水族館」など新規事業に乗り出した経緯を説明し、復興に向け地域が一体となる必要性などを訴えた。最後に「たとえ逆境に立たされても、周囲の人たちの協力を得て行動を起こすことで未来は開ける」と語り掛けた。

 中学3年の男子生徒は「これまでは地震と言われても実感が湧かなかった。4月から社会人になる。どんな環境でも挑戦を続ける人たちの話を聞き、くじけそうになっても頑張ろうと思う」と語った。

 沖縄と被災地の交流を図り、震災の教訓を次世代へつなぐことを目的に、気仙沼市出身の山内皓斗さん(34)ら那覇青年会議所のメンバーが講話を企画した。気仙沼の氷を使ったアトラクションも行われ、生徒たちは大きな氷に歓声を上げた。

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