新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、県は独自の情報共有システムで感染患者の入院状況を把握し、受け入れ先の病院を調整している。システムは「OCAS(オーキャス)」と呼ばれ、病院ごとのコロナ患者数を一覧で可視化できる。県対策本部の医療コーディネーターらが病床の空きや病院職員の勤務状況を勘案し、新たな患者の受け入れ先の差配に生かしている。
県独自システム オーキャス
県対策本部が置かれる県庁4階講堂。壇上横に大きなスクリーンが設置され、病院の入院患者数が症状ごとにリアルタイムで表示される。「○○病院から転院要請です」「△△病院でいったん受けて挿管して、別の病院に転院できるか確認を」―。医療コーディネーターや職員らが日々、OCASのデータを確認しながら、入院や転院の調整に当たる。
OCASを手掛けたのは県の医療コーディネーターの1人で、浦添総合病院の米盛輝武医師だ。コロナという未曾有の脅威に直面していた2020年4月、電話やファクスによる調整に「時間の無駄」を感じ、グーグルの表計算ソフトで県、病院側が入院者数などの必要情報をリアルタイムで共有できるようにした。意識したのは情報の即時性と正確性、透明性だ。導入によって、入院調整に要する時間を大幅に短縮できた。
入力される情報は、各病院の症状別患者数や受け入れ可能な病床数、ホテルや自宅での療養転換が可能な候補者数など。変更があれば病院側の担当者が数字を更新し、各病院や県対策本部に直ちに共有される。
「病院同士で情報を見せ合うのは信じられない」。米盛医師は、全国に先駆けたOCASの取り組みを知った県外の医師に驚かれたことがある。他の病院に余力があるなら、自分の病院は負担を避け患者を受け入れないようにする「変な駆け引き」(米盛医師)が生まれる可能性があるからだという。
しかし、沖縄ではそうならなかった。米盛医師は「よその病院が大変なら、うちも対応しようというプラスの方向に働いた。ゆいまーる精神ではないか」と話した。
県内の医療機関の協力があったからこそ機能したシステムだが、効率的な運用につながっても、病床には限界がある。第5波で県庁のスクリーンには、受け入れ可能病床がないことを示す真っ赤な表示で埋まるようになり、「歯が立たない」状況も訪れている。
米盛医師は「医療はハコ(ベッド数)の問題以上にマンパワーの問題がある。システムがあっても本質的なところは変わらず、堤防は決壊寸前まできている」と危機感を抱き、感染防止策の徹底を県民に呼び掛けた。
(當山幸都)
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