「首里城のがれきに新たな命を吹き込みたい」。ドイツを拠点に世界で活躍するアーティストの塩田千春さん=大阪府出身=が、12月4日から那覇文化芸術劇場なはーとで、首里城の焼けた瓦を糸でつなぐインスタレーション(空間芸術作品)を展示する。展覧会は「いのちのかたち」というタイトルを付けた。「記憶」をテーマに創作してきた塩田さんは「作品を見た人々の心の中で首里城の記憶が生き続けてほしい」と願う。
なはーとのこけら落としで展覧会をすることが決まった頃に首里城火災が発生した。ドイツで火災の報道に触れた塩田さんは「歴史が燃えていってしまう」と衝撃を受けた。
今年3月、創作に向けて初めて沖縄を訪れた。首里城で再建に関わる高良倉吉さんから説明を受け「救われた気持ち」になったという。「燃えてしまって記憶や歴史が終わるのではなく、新しい歴史、記憶をつなぐため、一生懸命尽くしている方々がいる。その熱意が強く伝わってきた」
なはーとでは、市民から募った「希望」に関するメッセージを糸でつなぐ作品も展示する。10月31日から11月14日までなはーとで、11月1日から9日まで那覇市役所で募る予定だ。
「コロナ禍の中で人々が希望を持つことは難しい。そんな時代だからこそ、たくさんの希望を糸でつないで一つの作品にすることで、何かがポジティブに変わるのではないか。展覧会が希望に満ちた空間になればうれしい」
▼【動くグラフィックと写真】あの夜何が起きたのか…首里城火災を振り返る