辺野古「不承認」に国は「いつ来てもおかしくない」 淡々と理論構築<辺野古不承認の深層>2


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設計変更の不承認通知を沖縄防衛局に提出した県の前川智宏土木整備統括監=25日午後4時39分、嘉手納町の沖縄防衛局

 県が辺野古新基地建設の設計変更申請の審査を進める中で、国は「(不承認の通知が)いつ来てもおかしくない」(政府関係者)と考え、不承認後の対抗策を練ってきた。沖縄防衛局は年内に対抗措置を取る構えで、県の不承認を経て理論構築を進めている。

 県側は国の措置を不服とし、今後新たな法廷闘争が想定される。県にとっては世論喚起などで新基地建設阻止の正当性を主張し、支持を広げる取り組みも重要となる。

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■冷静

 県の設計変更不承認に対し、国側の受け止めは冷静だ。ある政府関係者は「承認したら驚きだが、それはないという前提だった」と淡々と語る。

 国は行政不服審査法に基づく審査請求などを念頭に、対抗措置の検討を進めている。県の埋め立て承認撤回の取り消しなど、国はこれまでも審査請求を使って、県の新基地建設阻止策を封じ込めてきた。

 行政不服審査法は本来、私人の権利救済を目的とするため、政府機関の利用は「なりすまし」との批判も多い。申し立てと審査が政府内で完結するため、申し立て後は早期に防衛局に有利な採決が出るのは確実だ。

 別の政府関係者は「争点整理も事前に済んでいる。時期も含め速やかに検討する」と自信をのぞかせる。県にとっても国の手法は織り込み済みで、県関係者は「国側もすぐ打ってくるだろう。法律の専門家も交えて相談しながら(対応を)調整したい」と見据えた。

■突破口

 国側の対抗措置後、最終的には法廷闘争に入る可能性が高い。これまで9件に上る国を相手にした裁判で県が勝った事例はない。県関係者は「なぜ法律はこれほど国に都合よくできているのか」と嘆く。

 だが、これまでの埋め立て承認取り消しや撤回は、2013年の仲井真弘多元知事の承認を避けて通れず、一度認めているという事実に縛られた。今回は、当初の承認とは別に、新たな設計変更が提出されており、玉城デニー知事の裁量がある程度、認められる公算が大きい。県は、この点を突破口にしたい考えだ。

 とはいえ、裁判闘争では国が有利なことに変わりはなく、玉城県政も厳しい闘いになることを認識している。県幹部は「当然、法廷闘争だけではない。(不承認の決断を)世論喚起と外交交渉につなげる」と語る。県のワシントン事務所を通じて米側にも働き掛けつつ、玉城知事の早期訪米も視野に調整を進める。

 その上で、県幹部は、来年1月の名護市長選や秋の知事選で改めて民意を突き付けることを示唆した。不承認処分が新基地建設阻止の「最後のカード」と言われることもあるが、きっぱり否定する。「『最後のカード』を握っているのは県民だ」と語った。

 (斎藤学、明真南斗、塚崎昇平)


 名護市辺野古の新基地建設で、県が国の設計変更申請を不承認とした理由(処分通知書)の全文はこちらから


 

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