米軍キャンプ・ハンセンで新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生し、同基地で働く日本人従業員がオミクロン株に感染していることも県内で初めて確認された。県は「基地内で感染した可能性が高い」とみており、基地が水際対策の穴となった恐れがある。だが、米軍はゲノム解析など感染経路の解明に非協力的な姿勢だ。感染症対策でも、米軍の裁量で真相がうやむやにされる懸念がある。
感染者は米国から直接、嘉手納基地に到着した2部隊が中心だ。オミクロン株に感染した基地従業員に渡航歴がないことから県はクラスターと関連する可能性が高いとみており、米軍も「否定できない」と説明する。
感染経路の確定には米軍側もオミクロン株かどうかを確かめなければならない。だが米軍は「必要があれば」としてゲノム解析の実施を明言していない。解析する場合は本国に送るとしており、数週間以上かかるとみられる。県の検査協力の申し出も個人情報保護を理由に断った。デルタ株が確認され始めた頃も県は同様の提案をしたが、米軍は応じなかった。
米軍はハンセンへ移動して来た部隊の感染者が「行動制限下(だった)」と説明するが、徹底度合いは定かではない。ワクチンを2回接種している場合、基地の外に出ることはできないが、基地内は出歩けた可能性がある。相部屋だったとの情報もあり、兵士同士や従業員との関わりは否定できない。
基地内の感染について県はオミクロン株かどうかや隔離の状況さえ、米軍の協力なしに把握できない。背景に、日本側の検疫を米軍関係者に免除する日米地位協定がある。
日米が交わした衛生当局間の情報交換を定めた覚書に基づき、海軍病院と県はコロナ情報を交換している。ただ、今回の事態で覚書では地位協定の欠陥を補えていないことが露呈した。
(明真南斗)