【深掘り】沖縄の「選挙イヤー」開幕 知事選、参院選の試金石に コロナ下で暗中模索の総力戦


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 沖縄県内で主要選挙が相次ぐ2022年の「選挙イヤー」の初戦となる名護、南城両市長選が16日告示され、7日間の選挙戦の火ぶたが切られた。いずれも玉城デニー知事を支える「オール沖縄」勢力の候補者と、政権与党の自公勢力が支援する候補者による一騎打ちの構図だ。結果は県知事選や参院選などの行方を占う試金石となる。一方で、年末から続く新型コロナウイルスの急拡大で選挙戦の戦略転換を強いられ、暗中模索の「総力戦」が展開される。

 

 

■大物投入も自粛

 「まさに選挙イヤーだ。1月に名護市長選がスタートする。連動して運動を展開していきたい」

 昨年11月、自民党の茂木敏充幹事長が沖縄入りし、一連の選挙に積極的にてこ入れする構えを見せた。9月に任期満了を迎える県知事選での県政奪還が視野にある。

 特に米軍普天間飛行場の移設問題の進捗(しんちょく)に関わる名護市長選は、大物議員を続々と投入して市政奪還に成功した18年と同様、渡具知武豊氏の再選支援のため国政選挙並みに臨む方針だった。オール沖縄側も国政野党と連携を強化し、対抗する構えを見せていた。

 だが、そこに新型コロナの感染急拡大が襲った。各陣営とも地域回りなど支持者との対話、大規模集会などが難しくなり、大物政治家の来県も相次いで中止となるなど県外からの応援規模は大きく縮小した。

 ある陣営関係者は「厳しいが、活動が制限されるのも外からの応援が見込めないのはお互いさまだ。地元の運動量にかかっている」と語る。

 

■落とせない戦い

 昨年10月の衆院選で、オール沖縄は全県規模の選挙の総得票数で初めて自公勢を下回り、名護市を選挙区に含む沖縄3区では議席を奪われた。退潮が指摘される中、県政を死守するため求心力が問われる選挙が続く。

 名護市長選に立候補した岸本洋平氏の出発式では、故翁長雄志氏の妻の樹子(みきこ)氏もマイクを握り、辺野古新基地反対という翁長氏の遺志を語った。オール沖縄の原点を前面に結束を強めようとする陣営の思いがにじむ。

 玉城知事は名護市長選について「オール沖縄の巻き返しを図る選挙とは捉えていない」と述べつつ「翁長県政を引き継ぐ私を支援したいという人であれば、幅広くオール沖縄の一人だ」と新基地反対の支持は底堅いとの認識を強調した。

 一方で、自民側にも両市長戦を落とせない理由がある。県内政局のパワーバランスを測る指標として、県内11市の首長の勢力図を見る向きがある。現在、玉城県政に批判的な保守系市長は6人となっている。

 11市のうち9市を政権との関係が近い市長が占める時期もあったが、現状は1人でも欠ければ半数を割る。集票力に陰りがささやかれかねない。

 両市長選後に参院選や知事選に擁立する候補者選びを加速させる予定だけに、全県選挙の足場固めとして首長勢力の保持は至上命令となる。

 関係者は「名護、南城の二つを落とすようなことになれば、参院選に手を挙げる人がいなくなる恐れもある。知事選の選考にも影響する」と語り、必勝を期している。 (大嶺雅俊、池田哲平)


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