新型コロナウイルスの流行第6波の新規感染者は、2月に入り減少傾向だが、県内の社会福祉施設で感染が相次いでいる。陽性となった職員が陽性の利用者をケアする「陽陽介護」をせざるを得ない施設もある。感染対策費が増加する一方、利用自粛もあり、運営に苦慮している。
認知症の高齢者が利用する糸満市のグループホーム寿で1月末、施設内で感染が広がり、陽陽介護で乗り切った。保良康弘理事長は「居宅型なので施設閉鎖もできず、ぎりぎりの状態だった」と振り返る。
1月末に利用者9人中8人、職員12人中8人が感染。県に応援を要請はしたが、早期派遣は難しいとの回答だった。他の福祉施設への要請も考えたが、保良理事長は「逆の立場ならウイルスを持ち帰るリスクもある。同業者には頼めなかった」。結果としてせざるを得なかったのが陽陽介護だった。
職員は軽症だったが、出勤者が不足する中、防護服を着て日勤から夜勤までの長時間勤務だったという。
施設内感染は2月7日に収束。県から応援が派遣されたのも同じ日だった。保良理事長は「介護現場も医療現場と同じく逼迫(ひっぱく)している。感染対策の消耗品購入も事業者には大きな負担だ。助成金などを整備してほしい」と訴える。
デイサービスも感染対策や経営面で厳しい問題を抱える。中部にあるデイサービス施設運営者によると、認知症の利用者はマスク着用ができないなど、健常者と同様の感染対策が取れない。ストレスの少ない環境を整える施設の性質上、利用者を個室に留め置くなど明確なゾーニングも難しいという。
第6波では県からデイサービスの利用自粛を求める要請もあり、この運営者は「業界は経営的に大打撃を受けている」と悲鳴を上げる。職員の就労意欲を下げないために割増賃金などで対応する施設がある一方、経営が厳しく金融機関の融資を利用する運営者も増えているという。(嘉陽拓也)
【関連記事】
▼宮古と八重山で再流行も…まん延防止解除後も「完全な活動再開は困難」