沖縄出身25歳がポーランドで避難民受け入れ 祖父の沖縄戦とウクライナ、重なる心の傷


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ポーランドのカトヴィツェにある自宅で避難者を受け入れている東優悟さん(右から3人目)と婚約者のマルタ・キエジェックさん(同2人目)、息子のフランチシェックちゃん(右端)と、受け入れている家族=13日(提供)

 ポーランド在住、東 優悟さん
 ロシア軍の侵攻でウクライナ人が周辺国へ避難する中、隣国ポーランドに暮らす那覇市出身の東(あずま)優悟さん(25)は3月上旬から、婚約者と子ども計3人で暮らすアパートにウクライナから来た2家族6人を受け入れる。沖縄戦を体験した祖父の心の傷と、ウクライナ避難民の悲しみが重なり合い、行動に駆り立てられている。

 東さんはポーランド南部の都市カトヴィツェに住む。ウクライナの首都キエフから西に約800キロの場所にあり、侵攻が始まるとカトヴィツェの駅で多くの避難民を見かけるようになった。大きなかばんを背負い行き場を失った人や、駅構内の一角に敷かれた毛布の上で、幼い女の子を抱きしめながら眠る女性。

▼ロシアのウクライナ侵攻、沖縄への影響は?

カトヴィツェ駅にあふれかえるウクライナからの避難民ら=3月、ポーランド(提供)

 東さんはポーランド人で婚約者のマルタ・キエジェックさん(25)と相談し、受け入れを決めた。マルタさんは「同じ母親として、避難してきた親子に少しでも快適な暮らしをしてほしかった」と振り返る。

 東さんの祖父は沖縄戦を体験した。かつて祖父は「戦争は日本兵も米兵も、沖縄の人もおかしくしてしまった」と語っていた。多くの命が失われる、戦争の愚かさを目の当たりにして祖父は心に深い傷を負ったという。ロシアのウクライナ侵攻で、祖父の心の傷を思い出した。

 東さんは、ウクライナの女性が「私は人間なら誰とでも仲良くなれる。でも侵攻してきたロシア兵は人間とは思わない」と話すのを耳にした。今も同じように戦争に傷付けられ、苦しむ人たちがいる。その人たちのために力になりたいとの一心に突き動かされる。

 避難民の受け入れを呼び掛けると、2家族が名乗り出た。戦争の影響で光熱費が2~3倍に跳ね上がる中、受け入れは簡単なことではなかった。東さんが支援を募ると1日で10万円が集まった。ほとんどが日本にいる知人や家族で「ウクライナのために何かしたい」と思っている人が多いことを実感した。

 東さんとマルタさんはウクライナの子どもや孤児を預かる、保育園のような施設の開所を決めた。現地のNPO法人の協力も得ながら準備を進める。「子どもを預けることで母親が安心して働けるし、その施設で母親が働けば収入源にもなる」と説明する。

 開所には最低でも140万円が必要で、運営にはさらに資金が必要になる。東さんは「この戦争がいつ終わるか分からない。終わっても破壊されたウクライナの街が日常を取り戻すのはいつになるのか。支援の終わりは見えていない」と語る。

 「毎日、ニュースや新聞でウクライナ侵攻による犠牲者の数字が出るが、その一人一人に家族がいて、周辺に傷付いている人がいる。その人たちの深い傷を知ったときに、平和な未来がつくれるのではないか」。戦争が終わり、安心して暮らせる日常を取り戻すために、避難民の支援を続けるつもりだ。
 (友寄開)

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 施設開所に向けた募金の振込先は沖縄銀行小禄支店(店番号136)、普通預金で口座番号1749248。口座名は「ウクライナ避難民支援 東 さつき」


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