沖縄県は28日、首里城地下の日本軍第32軍司令部壕保存・公開検討委員会の第5回会合を開き、第1坑口と第5坑口の整備を前倒しで進め、首里城正殿が復元される2026年度までの先行公開を目指すロードマップ案を公表した。第1坑口は26年度、第5坑口は25年度を公開のめどとした。第1坑口の整備・公開方針を県が示すのは初めて。
守礼門近くにある第1坑口は、沖縄戦さなかの1945年4月、米軍の空爆でふさがれたとの証言が沖縄師範学校の元学徒らの手記「昇龍」などに残る。戦時中、司令部壕を調査した米軍も未調査で、68年に県観光開発事業団が調査を試みたが、第1坑口から壕内に進入し、坑道約20メートルを調査したところで落盤のため中止し、埋め戻した。
県が示した今後の取り組み案とロードマップ案によると、2022年度以降、県は優先的に第1・5坑口の整備・公開と未発掘区間の第1坑道の調査に取り組む。第5坑口は、坑口周辺の土地の取得、安全対策を実施。第1坑口はボーリング調査などで位置を特定する詳細調査を実施し、公開方法を検討する。第1・5坑口いずれも関係機関との調整と整備を要する。
未発掘区間の第1坑道の調査については、物理探査やボーリング調査で詳細位置や内部状態を把握する。木曳門(こびきもん)付近にあるとみられる立て坑「シャフトA」も調査する。
発掘済み区間の第2・3・5坑道はデジタル技術での公開発信を行う。
第1・5坑口以外の保存公開の方針について、県女性力・平和推進課の担当者は「詳細調査による安全性確認などを踏まえた上で、保存公開が可能かどうか評価を行う。評価を踏まえ、32軍壕の基本構想の策定を行う」と説明した。財源について担当者は「さまざまな手法を県のほうで検討していく」と述べた。22年度の委員会は技術検討と平和発信・継承のグループに分かれて検討し、22年度中に知事に提言を行う。
(中村万里子)
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