在沖米軍が3月31日、市街地に位置する那覇港湾施設(那覇軍港)での警備訓練でフェンス外から撮影していた本紙記者に銃口を向けた件。記者が撮影した連続写真からは、その銃口が記者の立っていた国道側の民間地の方向に向いていることも見てとれる。県内では本島北部の射撃場を備えた基地のみならず、これまで市街地に隣接する中南部の基地でも、銃を使用した訓練が確認されている。今回の件は、あらためて基地と生活が隣り合わせにある沖縄の普通ではない日常を浮き彫りにした。
那覇軍港では2月、在沖米海兵隊が「非戦闘員避難」を目的に訓練を実施し、銃で武装した隊員らが活動する様子が確認されている。今回の警備訓練は兵士らが小銃で武装し、周囲を警戒する様子が確認された。2月の訓練時、米軍は日本側に武器使用を通告していたが、3月末の訓練では武器使用は明らかにしていなかった。
元陸上自衛隊レンジャー隊員の井筒高雄氏は、自衛隊では銃口を駐屯地外の人に向けることは基本的にないと説明する。今回の米兵の動きについて、記者のカメラのレンズの光の反射が、狙撃銃の照準器レンズを連想した可能性も否定できないとした上で「(基地周辺でレンズを向ける人は)報道カメラマンだと想定できるはずだ。銃口を向けてまで威嚇する必要があったのか」と疑問視する。
また「良き隣人としての信頼感を得たいのであれば、訓練を自ら報道公開し、反対や批判の声に耐えうる内容だと説明すべきだ」と指摘した。
2005年と12年には国道58号に隣接する浦添市の米軍キャンプ・キンザーでも、基地内から国道に向けて銃を構えて訓練する様子が確認された。12年の訓練では、基地司令官が当時の儀間光男市長に市民に不安を与えたことを謝罪している。
本島北部で射撃場が存在する米軍キャンプ・ハンセン(金武町など)、キャンプ・シュワブ(名護市など)では銃撃音や爆発音が聞こえることもあり、戦闘を想定したより実戦的な訓練が実施される。12年にはハンセンに隣接する宜野座村松田区の提供施設区域外の草むらで、米兵が国道に向けて銃を構える様子も確認されている。実弾射撃に伴い、民間地への実弾や照明弾などが着弾する事故も発生している。
(塚崎昇平、知念征尚)
<識者談話>布施祐仁氏(ジャーナリスト)地域社会に配慮必要
米軍は「警備訓練なので銃を使うのは当然で、実弾が入っていないので問題ない」と主張するかもしれないが、銃口を向けるという行為だけで市民は不安を覚える。自分も向けられた経験があるが、撃ってこないと分かっていても怖いものだ。まして子どもたちがその様子を見掛ければ、より恐怖を感じるだろう。
日米地位協定3条は、米軍に提供施設・区域内の排他的管理権を認めている。一方で「公共の安全に妥当な考慮」を払うことも明記されている。市街地に近い施設で外から見えるように戦闘訓練を行ったり、銃口をフェンスの外に向けたりすることは、市民に恐怖を与え、地位協定の精神にも反する。
地域社会への配慮という観点から二度とあってはならない。過去には、浦添市の牧港補給地区(キャンプ・キンザー)でも、兵士が銃を国道に向けたことがあった。日本政府は米軍の言い分をうのみにするのではなく、市民の側に立って抗議すべきだ。
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