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玉城知事の「米国民政府の統治27年」は誤情報 52年までは軍事占領<ファクトチェック>


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 沖縄の日本復帰50年を記念して、15日に宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで開かれた復帰50周年記念式典で、玉城デニー知事が述べた式辞の表現に誤りがあった。玉城知事は「サンフランシスコ講和条約の締結による米国民政府の統治が、戦後27年間にもおよび」と述べた。同条約は1952年4月28日に発効した。条約発効による米国民政府の統治期間は52年から沖縄が日本に復帰した72年5月15日までの約20年間が正確だ。

▼【動画ニュース】沖縄復帰50周年記念式典

 米軍は米国民政府の前身として45年4月の「ニミッツ布告」に基づき「米軍政府」を設置していた。同政府は50年から米国民政府となる。
 県秘書課は18日、正確さを欠く表現があったとして、式辞を「本土復帰までの27年間、サンフランシスコ講和条約が締結される等、米軍の施政権下にあった」に訂正した。
▼日本復帰50年、沖縄と東京で式典

玉城デニー知事

 琉球大の我部政明名誉教授は沖縄戦が終結した45年から52年のサンフランシスコ講和条約発効までの期間は「軍事占領」、52年から72年の期間は同条約に基づく米国の「施政権下」だと説明。「よく『米軍占領下から72年に日本復帰した』というフレーズがあるが、これは間違いだ。軍人がずっと統治の責任者だったので『軍事占領』のイメージがついたのだろう」と話した。
 さらに玉城知事は式辞で、沖縄は日本復帰するまでの間、「パスポート無しでは日本本土への渡航も許されない」と述べた。現代のパスポートは海外渡航の際に必要な身分証明書で、政府が海外へ行く自国民の保護を依頼する内容だ。
 我部名誉教授によると、当時、沖縄と本土への渡航は米国民政府の制限下にあり管理されていた。米国民政府などから沖縄の人々に発行されたのは同政府が許可した者のみ日本に行ける渡航証明書で、現在のパスポートとは性質が違うとした。
 県秘書課は「正式には『日本渡航証明書』だが、分かりやすいように一般的に使用されている表現とした」と説明した。 (梅田正覚)

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