自衛官の黎明之塔「参拝」で陸幕が文書 慰霊の日 「私的」の主張揺らぐ


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防衛省陸上幕僚監部が作成していた「慰霊の日」の陸自幹部による「参拝」について組織内での報告文書=8日、東京

 【東京】2021年6月23日の「慰霊の日」に、沖縄の陸上自衛隊トップ佐藤真第15旅団長(当時)ら幹部3人が制服姿で日本軍第32軍の牛島満司令官らを弔う「黎明之塔」を「参拝」した件で、防衛省陸上幕僚監部が陸幕長ら幹部への報告文書を作成していたことが8日までに分かった。「参拝」は04年から実施され、陸自側は「私的」なものとしている。元自衛官の軍事評論家・小西誠氏は「組織として隊員の行動を監督していたことになり、『私的』の範囲を逸脱している」と指摘した。

 政治活動家の中村之菊(みどり)氏が情報公開請求で入手した内部文書で判明した。内部文書は、昨年の慰霊の日当日に陸幕監部人事教育部人事教育計画課服務室が作成した。

 文書は「報告」の位置付けで決裁が必要ではないとみられる。文書では佐藤旅団長らの行動について「私的に(制服着用)黎明之塔を含む各施設に慰霊を実施」としている。
 陸幕長、陸幕副長、人事教育部長に共有されていたとみられ、決裁欄には人事部長の項目に「同時報告」、陸幕長、陸幕副長の項目には「部長報告後呈覧」と記載されていた。「沖縄慰霊の日関連状況について」として「他隊員は、私服あるいは他時間帯での実施を予定し、慰霊を実施している模様」とも報告し「最大25名程度」と参加人数も載せた。

 「黎明之塔」の「参拝」に関する内部文書は複数あり、陸自幹部による「参拝」への市民団体の抗議内容についての報告もあった。

 陸幕広報は報告文書の作成意図について「報道機関などからの問い合わせに適切に対応するため、防衛省として統一した見解の情報共有を目的としたものだ」と答えた。その上で「参拝」は「私的な慰霊行為であり、その行為自体に問題があるとは考えていない」との見解を示した。
 (安里洋輔、明真南斗)

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