【うるま】地域の住民が協力して出資、運営する共同売店。1960年代までに多い時期で県内各地に約200店あったが、時代の変化とともに現在は半数以上が閉じている。住民にとっては日用品の購入だけでなく、交流の場所などの役割も担う。うるま市の浜比嘉島では共同売店の再開に向けたプロジェクトが始まっている。伊計島では共同売店の存続へ模索を続けている。
浜比嘉島では、旧浜中学校の校舎の一角を活用した「浜共同売店(仮)の立ち上げプロジェクト」が、2020年からトヨタ財団の助成金を受けて始まった。今年5月28日、売店と食堂「ハマチュー」がプレオープンした。現在は一般社団法人プロモーションうるまが運営しているが、最終的には地域住民運営の共同売店にすることを目指す。7月の本格開業に向けて、地域のニーズに合わせた商品やメニューを充実させる予定だ。
浜比嘉島の共同売店は1928年に途絶え、島最後の個人商店も2019年になくなった。浜地区の城間正宏区長によると、車を運転できない高齢者が知人に島外への買い物を頼んでいるケースもあるという。城間区長は「島は高齢者が7割以上になっている。車がないと買い物もできない。大変助かる」と期待している。
伊計島共同売店は1920年ごろに建てられた。82年に伊計大橋が開通した数年後から赤字が続いている。これまで黒字分の積立金などを切り崩してきたが、近年は資金繰りが困難になっている。個人経営に切り替える案なども出ており、今後、地域で協議して経営形態が決まる見込みだ。
伊計自治会は共同売店の存続へ向けたさまざまな取り組みを続けてきた。伊計島では5年前から麦を生産しており、共同売店ではオーガニックブランド小麦「島麦かなさん」を販売している。店頭には麦わら帽子やその麦を使ったクラフトビール「うるまさうし」が並び、島の特産品にこだわっている。塩モズクや黄金芋など島で取れた旬の食材もそろえ、観光客などの誘致につなげている。
昨年は、県外出身の若者らが有志で共同売店の活性化に取り組む「愛と希望の共同売店プロジェクト」と協力し、売り上げや類別の集客数などのデータを集計した。今後、業務の効率化を図るつもりだ。交流拠点となる食事スペース「島キッチャ」も設置した。玉城正則自治会長は「共同売店は島の活性化の大事な拠点だ。島人のルーツを確認できる思い出の場所を残したい」と知恵を絞っている。 (古川峻)
【関連記事】