陸自沖縄トップ、例年の「参拝」中止か 沖縄戦の司令官弔う慰霊塔 「私的」に疑義でる中


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例年夜明け前に実施されてきた陸自沖縄トップの「参拝」が今年は確認されていない、沖縄戦の司令官らを弔う黎明之塔=23日午前5時10分すぎ、糸満市摩文仁

 沖縄戦の戦没者を追悼する沖縄の「慰霊の日」の23日、沖縄に駐留する陸上自衛隊第15旅団の旅団長らが例年続けてきた糸満市の「黎明之塔」への「参拝」が今年は午前7時現在、実施されていない。「黎明之塔」は、沖縄戦当時の日本軍第32軍の牛島満司令官らを弔う慰霊塔。自衛隊トップの「参拝」の監視を続けている県平和委員会の大久保康裕事務局長(59)は、今年は「参拝」が行われていないことに「自衛隊が『私的』と説明してきた参拝が、報道で『公的なもの』ということが明らかになり、来ることができなかったのではないか」と推測した。

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 「黎明之塔」は糸満市摩文仁の沖縄平和祈念公園内にあり、32軍の牛島司令官と長勇参謀長の2人を弔う慰霊塔。沖縄戦では牛島司令官が最後まで闘い続けるよう命令を発した上で自決し、その後も大勢の住民が戦闘に巻き込まれて命を落とした。2004年から始まった現地自衛隊トップの制服姿での「参拝」は毎年同日午前5時前ごろに実施されてきた。

 その沖縄戦を指揮した司令官の慰霊塔を、現在の実力組織である自衛隊の現地トップが制服で「参拝」することは、当時の日本軍の行為を肯定的に評価し賛美するものだとの批判も絶えない。陸自は従来、現地トップの「参拝」は「私的」なものとの見解を繰り返してきた。

 しかし昨年の旅団長の「参拝」を巡って、従来「私的」なものと位置づけてきた防衛省陸上幕僚監部が、部内で旅団長の「参拝」に関する報告文書を作成していたことが今年6月に判明。「私的」としている行為を組織として把握していたことになり、識者からは「『私的』の範囲を逸脱している」と、従来見解と矛盾しているとの指摘が上がっていた。

 この日、黎明之塔には「参拝」に反対する市民や日の丸を掲げた団体ら約50人が集まった。現場にいた大久保さんは「自衛隊の参拝は多くの住民が犠牲になった沖縄戦の実像をゆがめるものだ。沖縄戦に対する県民の思いが、参拝をやめさせたと思う」と語った。

 今回、「参拝」が実施されなければ、2004年以降で初めての中止となる。

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