台湾防衛成功でも日米に「多大な代償」 米CSIS、中国軍侵攻の場合の机上演習公表 沖縄の基地、民間空港使用にも言及


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 米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)は9日、中国軍が2026年段階で台湾に侵攻した場合の机上演習結果を公表した。多くのシナリオで米国と日本、台湾が勝利するものの、必要条件の一つとして米軍が「日本国内の基地を作戦に使用できなければならない」と、台湾に近い県内の基地や民間空港を使う重要性に言及。台湾防衛に成功しても米国とその同盟国は多大な代償を伴い「米国の世界的な地位を長年に渡り損なうことになる」と、抑止力を強化する必要性を訴えた。

 報告書は、日本が戦争に参加する可能性について「日本の基地、または日本の米軍基地が攻撃された場合にのみ、日本が戦争に参加する可能性が最も高い」と分析した。

 自衛隊が参加しなかった場合も中国を利することになるとし、日本との外交・軍事関係を深化させるよう求めた。

 沖縄の米軍基地は台湾に最も近く、沖縄から航空機が発進できれば台湾周辺により長い時間とどまることができると優位性を挙げた。相手の脅威圏内に位置し「脆弱(ぜいじゃく)性も高い」とデメリットも触れた。

 中国によるミサイル攻撃の効果を薄めるためとして軍用機が使う飛行場を民間空港にも広げる必要があると指摘。離島の空港・港湾を平時から自衛隊が利用できるようにすることを盛り込んだ昨年12月閣議決定の安全保障関連3文書と同じ方向を示した。地元から反対の声が上がる可能性があるとしつつ「大きな利益があるため、強力な努力をすることは正当化される」と推進する必要性を強調した。

 一方、米軍が日本国内の施設・区域から「戦闘作戦行動」を行う場合、日米地位協定に基づき日本政府との事前協議を義務付けていることについて、日米で認識に食い違いがあるとし、是正する必要性を盛り込んだ。

 文書はまた、軍事的な侵略が避けられなかったり、侵略の可能性が高かったりすることを意味するものではないとした。

(知念征尚)
 

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